こまごまとした補足

その1:地謡
ここんとこ、銕仙会関係の公演を続けて見ているのですが、当然出演者は同じような面々。
ざっと、今まで観た舞台の記録を振り返って、思いました。(番組をエクセル管理している理系人間)
地頭が、○○師だと、うっとりする。
○○○師だと、燃える。(笑)


もちろん、曲趣やシテにもよります。
けど、シテもそんな傾向を鑑みて、地頭を決めているのでは?
いやいや、得手不得手はあってはならない、何でもできるのが玄人というのは分かってますけども。


そんな中。
先日の青山能の『砧』は、「燃える」系でした。
情念の火がメラメラと。
いや、炭火のように、炎は見せないけれども、じぃっと消えない、強烈に高温な、カタマリ。
6人地とは思えない迫力。
ぐいーーーっと迫ってきて、すとんと突き放されるような、高揚感と間。
1曲を通してその集中力が持続するのって・・・最後はランナーズハイみたいになってるんじゃなかろうか?


交感神経優位の緊張状態から、副交感神経優位に切り替わった時、つまり、緊張がふっと弛んだ時に、涙が出るそうです。
地謡って、そういうツボを押さえてますね。


その2:装束と笠
平日の公演て、なかなか行かれず、青山能も初めてだったのですが、終演後にミニレクチャーがあるのですね。
毎回、次月の役者が担当するそうで、今回は、10月24日に『隅田川』のシテを務める柴田稔師。
装束についての話ということで、まず『砧』のシテ、ツレの出で立ちでもあった、唐織着流しを、実際に着付けるところを見せてくれました。
中に入ってしまう部分(右前身ごろ)て、腰の辺りから足元までかなり折り込んでるんですね。
そして、紐1本で。(実際には、要所を糸で縫い止めるそうです)
続いて、方袖を脱いだ状態に。
これは、なにか労働をする時の姿だそうです。(『砧』では、砧を打つところ)
また、笹を持てば狂女に。
次に、両袖を脱いで、諸肌脱いだ裸の状態(を表す)に。
『羽衣』の天女の登場シーンは、この出で立ち。
その上に水衣をつけると、やはり下々の働く女か、旅をしている姿。
笠を被って、笹を持てば・・・ほーら、『隅田川』のシテに!
柴田センセ、上手く誘導しました。(笑)


ちなみに、この笠、観世流は「女笠」と「男笠」の区別があるそうです。
女笠の方は、頭頂部が丸く、男笠の方は、尖っているとのこと。
他の流儀では、尖ったのを、男女の区別なく用いているとか。
今は、こういうものを作る職人さんが減ってしまって、手に入れるのが大変だそうです。
笠の被り方にも、コツ(?)があって、前下がりにするのだけれども、そうすると、客から面が見えないし、シテの視界も悪くなる。更に、声が笠に遮られてこもってしまう。それを避けるために、昔は笠に錐で穴を空けていたりもしたのだとか。
もっとも、面が見えないという点は、その後舟に乗る時に笠を外すので、そこで初めて面をはっきりと見ることができ、演出効果になっている、とも。


その3:見所
銕仙会関係の舞台で、脇正面に座るものじゃないですね。
先生が目の前に居ると思うと、おちおち居眠りもでき・・・ゴホゴホ。
レクチャーで登場した時には、どう視界から逃れようかと小さくなったのですが、いかんせん青山の見所ですので・・・。(苦笑)