第5回 青葉乃会@喜多能楽堂

ほひぇ〜〜〜。
な、気分。

能舞 相聞  原詩:芥川龍之介  構成・節付:観世榮夫
シテ 観世銕之丞
大鼓 柿原弘和
小鼓 大倉源次郎
笛  一噌仙幸
地頭 観世榮夫

狂言 仏師
シテ(すっぱ) 野村万之介
アド(田舎者) 月崎晴夫

仕舞 景清
観世榮夫

能 松風
シテ(松風) 柴田 稔
ツレ(村雨) 谷本健吾
ワキ(旅僧) 工藤和哉
アイ(浦人) 竹山悠樹
シテ 観世銕之丞
大鼓 柿原弘和
小鼓 大倉源次郎
笛  一噌仙幸
地頭 浅見真州


(後見、地謡は省略しました)


能舞 相聞
芥川龍之介の詩を基に、観世榮夫が構成・節付けしたものだそうです。
能舞という、余り馴染みのない形態。お調べはなく、地謡囃子方は切戸口から出て、地謡地謡座に、囃子方は床几にかけずに正座。シテは面・装束を身に付け、次第によって幕から出てきました。


繰り返される言葉が、感情の揺らぎや、恋の堂々巡りを思わせる。
シテは、恋をしているというよりも、何かを諦めたような、さらりとした表情をしていた。(←面ですけども)
自分は恋などしていない、あなたが勝手に好きになったのよ、なんて言いたげな風情。
けど、後半、とある瞬間、あ、泣いてる、と思った。
それでも、彼女は気持ちを隠して、「私の顔の濡れているのは涙ではなく雨のせいよ」なんて恋人に冷たく言っちゃう。(←そんな台詞はない)
苦しい、まさしく、「恋」、だなぁ・・・。


地謡が、素晴らしかった。
榮夫を中心に、波紋が出来るような。
銕仙会の謡って、雑巾をぎゅ〜〜〜〜っと、カラカラに絞って、パンッと広げる気持ちよさがある。(←意味不明)
囃子はちょっと派手かな。(音ではなく、手組が。何となく。)


狂言 仏師
お堂を建立した田舎者が、仏像を求めて都へ出、仏師(仏像を作る職人)を探し歩いていると、すっぱが声をかける。何だかんだのうちに交渉成立するが、その仏像はすっぱが面をかぶってなりすましたもの。それを仏像と信じる田舎者は、形が気に入らないとすっぱを呼び出して、作り直させる。


万之介さん、何だかとっても元気でした。
すっぱといっても、騙して儲けようという、ぎすぎすしたものではなく、ちょっと田舎者をからかってやろう、という雰囲気。(それが、狂言のいいところ。)
仏に成りすましてのポージングが、おかしくって、かわいい。


仕舞 景清
屋島での三保谷四郎との錣引きの武勇譚を語るシーン。
ウルトラ尉榮夫の仕舞です。
カッコイイ!
獲物を狙うような、鋭い眼。
今は年をとっているけれども、昔はすごかったんだぞ〜、と、語る姿は、まさしく景清!(←実はまだ見たことない)
榮夫で『景清』を見てみたい!


能 松風
諸国一見の僧の前に現れた、汐汲みの海人2人。実は、松風と村雨という姉妹の亡霊であると僧に明かし(はっきりきっぱりと「松風村雨二人の女の幽霊」と自分達で名乗ります:笑)、行平との別れを思い出す。更に松風は行平の形見を身に付け、行平を待った日々を思い出して狂おしく舞う。


汐汲みのシーンなんかは、耽美的というか、象徴的だなぁ、なんて裏を勘ぐりながら見ていたのですが、いつの間にか、彼女の妄想世界に取り込まれて、私自身も混乱してしまいました。
形見の烏帽子と狩衣をぎゅぅ〜〜っと抱きしめるのが、想像以上に激しくて、ぞくっとしました。
こんな形見を残していって、なければ思い出すこともないのに。けれどやはり懐かしい、捨てられない。
ワガママな乙女の心理ですね〜。
松を行平と思い、駆け寄ろうとする松風、それを押し止める妹村雨。(ツレ大活躍)
能にしては、お芝居的なシーン。
その制止を振り切って松を抱きしめてしまうのは、秘密の行為を覗き見ているようで、何だか、恥ずかしい。
ええっ、この女、どうしちゃったの?(by 僧)(←ウソです)
松風にとって、松は行平で、喜び狂い、混乱は極致へ。
好きな人の夢を見て、夢がさめても、その名残を離したくなくて、じっと動かず目を瞑ったままでいるのに似た感覚。


この前の『江口』やこの『松風』のように、最後に回向を頼んだりするような曲のワキって、大変そう。
それまで意識の外にいたワキが(え、居たの?て本気で思っちゃった)、またすぅっと浮かび上がってきて、シテの思いをしっかりと受け止めなきゃならない。
そこで世界が完結する。
『井筒』だと、夜が明けて、シテが霧散するように、夢から覚めるけれども、気配は色濃く残ったまま、また夜になると同じ事が繰り返されるような気がする。


囃子も良かったです。
特に大鼓の柿原弘和。考えようによっては、ドロドロにエグい話(笑)なのに、清々しくリードしていた。
小鼓の大倉源次郎、『相聞』ではちょっと疲れてる?と思ったけど、こちらはいつも通りに素敵でした。(笑)それにしてもこの人って、情景描写が上手い・・・雨の音や、波の音や、風の音に聞こえる・・・のは、私だけ?
笛の一噌仙幸も良かったなぁ。白い大きな布のたなびくイメージ。


辛口(?)コメントも書いておくと・・・
中ノ舞のとき、少し疲れが見えた気がしました。
シテとツレとの声の相性はいいけれども、ツレの声量が物足りない気がしました。
床几に腰掛けてる方がキツイんでしたっけ?動き辛そうでした。


その他いろいろ。(←どうでもいいコネタ)
物着の時、お人形さんみたいで、可愛かった。
水衣の上から長絹をかけて、水衣をはずしてと、肌(下の着物)を見せないように着替えてました。これもたしなみとか、奥床しさなのでしょうか?
松の作り物を、テツノジョーが持ってきて、位置をチェックするのがなんだか可愛かった。(後見がんばれよ、とか言いたくなる)(←言わなくていい)