金剛永謹の会 第22回東京公演@国立能楽堂

謡&仕舞のお稽古の後、行っちゃいました。
当日券で。
突発的に。
衝動的に。
つまり、現実逃避

解説  種田 道一

狂言 地蔵舞
僧	山本 東次郎
主人	山本 則秀
		
仕舞 加茂
  金剛 龍謹	
		
能 井筒 物着・古比之舞
シテ	金剛 永謹	
ワキ	工藤 和哉
大鼓	亀井 広忠
小鼓	幸 清次郎
笛	一噌 仙幸

附祝言地謡・後見は省略)


金剛流ってほとんど見たことありません。
好き嫌いじゃなくて、チャンスがなくて。
ならば、御宗家の会だし、井筒だし、上手くいけば金剛流ラブになるかもね(なんじゃそりゃ)、なんて思って。


解説は、仕舞と『井筒』の地謡も勤めていた金剛流能楽師の方。
能『井筒』のあらすじや元ネタの『伊勢物語』の事、今回の小書きについてなど、20分かけた丁寧な説明でした。
「幽玄」というのは、字面から暗いイメージを持つけれども、京都言葉でいうところの「はんなり」なのだそうです。(京都ではこれで通じるんですが、どうでしょうか、と苦笑してました。)
また、「公家のたたずまい」とも表現してましたが・・・ますますわからないです。(笑)
華やかで、穏やかな、ふわっとした感じでしょうか??
あと、動いていない時も中身は緊張しているのだ、というのを、回転する独楽に例えたのは面白かった。(回転が速いほど、じっとして見える、と。)


『地蔵舞』
「旅人を泊めない」という立札のある村に僧がやってきて、とある家に地蔵のふりをしてもぐりこんで・・・すみません、お稽古で疲れていたのか、前半部意識を失い、気づけば酒盛りでした。


僧ゆえに酒は飲めない・・・が、吸うことならできると、飲むこと飲むこと。
(飲み方は、普通のお酒の飲み方と同じでした。ずるずるっとするかと思った。)
主と共に飲んで、謡って、舞って、だんだんテンションがあがってくるよう。
東次郎さん、「謡わせられい」とか「〜して下されい」とか、語尾が跳ね上がるのが、妙にかわいい。
最後に僧の舞う舞が「地蔵舞」で、地蔵の役割やら功徳やらを表現したものでした。
大蔵流の歩き方って、最初ゆっくりでだんだん早くなって、とリズムがあるのですが、舞でも柱の間を、ちょこちょこちょこ〜〜〜って早足なのが、コミカル。


『加茂』
え〜〜っと、アンバランスな印象を受けました。
・・・すっごく、ハンサムなんです。(爆)
彫りが深くて、鼻筋通ってて、ハーフみたいで。
袴だけれども、足が長いんだろうな〜って分かる風に、腰の位置が高い。
それが、動きを軽く、不安定に見せてしまっている。
声の低さが、能楽師というより外国映画の吹替えの声優という雰囲気。
う〜〜〜〜ん。
勇ましい内容の詞章と、地謡のノリもちぐはぐな感じ。
ごめんなさい、何だかあちこちばらばらで、気持ち悪かった。(汗)


『井筒』
伊勢物語の23段がベースになっていて、旅の僧の前に里女(前シテ)が現れ、古塚に水を手向け、在原業平とその妻の紀有常の娘の話、井筒の話などをして消えます。(物着)仮寝をする僧の前に業平の形見の装束を身に着けた井筒の女の霊(後シテ)が現れ、舞を舞い、井筒に姿を映して業平の面影を偲ぶ・・・そして夜が明け、僧の夢も覚める、というお話。
「物着」は、中入りせず後見座で物着をするため、間語りが省略される小書き。「古比之舞」は、破の尺で序の舞を舞う、と言うことらしいです。(が、はて?)


夢幻能の代表とも言うべき名作、有名曲であるのにもかかわらず、一曲通して見たのは初めてです。
うん、いい。
前場で謡われる、さまざまのエピソードや和歌も、分かりやすいし。
後場の序の舞から、井戸を覗くという型も面白い。
何よりあの風雅で倒錯した全体の雰囲気。
よくできた曲ですね。(←何をいまさら)


いろいろ解釈はあるのだろうけど(え?ない?)、後シテって、幽霊なんかじゃなくて、若いときの女そのもの(回想シーンでもいい)で、夫を慕って舞い、井戸を覗いた時に、幽霊になっちゃうんじゃないかな?
僧だけでなく女自身も夢を見ていて、それが醒める、あるいは時間が重なる。
そういう意味での、「なつかしや」に聞こえた。


用いられる小面の写真がパンフレットに載っていたのよりも、実物の方が幼く見え、可愛かった。
それが後シテになると、口紅を塗ったように、口元が艶やかに見え、色っぽくなった。
イカケ(顔の両脇につけてる飾り)の影なのかな?
女ってちょっとした工夫で変わるのねってとこでしょうか。(笑)
そうそう、物着のとき、それまでシテが着ていた唐織を後見が広げ、シテと着付けをする後見ごと覆っているというのも、初めて見ました。
(いいじゃん、隠さなくったって〜。)


シテの永謹さんですが、声がこもり気味で聞きづらかった。
表情と雰囲気は良かったのだけど。
笛の音が、素敵だったなぁ。秋だねぇ、ススキだねぇ、人恋しいねぇ、て囁きかけてる?(笑)
大鼓も、吼えてるばかりじゃない、というのが分かったし。
小鼓は、艶やかな音色。(もう少し抑え気味のほうが好みだけど)


「井筒」って、いいねぇ♪


(結論:金剛流ラブにはなりませんでした。)