第24回喜多流青年能@喜多六平太記念能楽堂

kazashi2006-09-23

秋分の日です。
お彼岸です。
おはぎです。(商品名は「ぼた餅」だったけど)


番組はつぎのとおり。

能『知章』
シテ  大島輝久
ワキ  御厨誠吾
ワキ連 大日方 寛、梅村昌功
間狂言 大蔵教義
大鼓  原岡一之
小鼓  幸 信吾
笛   小野寺竜一

狂言『寝音曲』
主    大蔵吉次郎
太郎冠者 大蔵教義

仕舞『錦木』
狩野 了一

能『紅葉狩』
シテ  井上真也
シテ連 松井俊介、佐藤寛泰、塩津圭介
ワキ  則久英志
ワキ連 梅村昌功、殿田謙吉、殿田達也
間狂言 宮本 昇
大鼓  柿原光博
小鼓  森澤勇司
太鼓  桜井 均
笛   杉 信太朗

(地謡・後見は省略)

『知章』
知章は、一の谷の合戦で父の平知盛を助けて討死した16歳の若武者。僧(ワキ)が須磨の浦で、知章の追善が営まれているところに遭遇し、そこへ里男(前シテ)が現れ、知章の戦いの様子(知盛を助けた後、馬で海を泳ぎきったとか)を語り、消える(中入り)。僧が弔っていると、知章の霊(後シテ)が現れ、更に合戦の様子を語り、知盛が息子の死を涙ながらに大臣に報告するという場面も謡われる。終盤、知章の討死する格闘シーンが激しい型で演じられる。


白状しましょう、シテの大島輝久さん目当てでした。(爆)
仕舞を見た事があり、とても好みのタイプの声だ〜と思って、能を舞う機会を待ってたのです。(広島まではさすがに・・・まだ。)
で、来てみたらば。
前シテは直面♪(ああ、正面に座ってよかった ←間違った能の見方)
後シテも、初々しい少年、て感じです。(何の面だったんだろう?可愛かった。)


知盛が知章の死を泣きながら語ると謡われるあたり、段々混乱してきて、床几に座っているのは知章なのか、知盛なのか、それともそれを聞く第3者か?
格闘シーンも、知章の首が切られるのを、知章自身が語ってるんですよねぇ・・・。
組み合って、髪をつかんでと、かなりリアルな描写で、ゾクッとしました。(カッコ良かったけど♪
時空も、自他も飛び越えるわっ、能って、と改めて思いました。
(修羅能にしては、物語として少し複雑な気もします。・・・何となく)


謡に「ありがたや」(僧の弔いを感謝して)と何度も出てきて、知章って、礼儀正しい、いい子だったんだろうなぁ〜なんて思ってしまった。
最後なんか、ぐ〜っと見つめ合って、
 知章「ほんとにありがと〜♪」
 僧「どういたしまして☆」 (なんて、台詞はないですが)
・・・いかん、また妙な想像を・・・。


笛は、少し迫力不足に思えました。優しい感じで、それはそれで心地いいのですが・・・。
大鼓の原岡さんの声、結構好きです(ちょっとかすれてて)。打つ姿もきれいですし。
小鼓は、ちょっと大鼓と合ってないような気もしました。
ともあれ、囃子方も含めて、全体に、清々しい印象でした。
大島さん、カッコ良かったなぁ♪・・・て、他に感想ないのかって感じですが。


『寝音曲』
太郎冠者は謡が得意だと聞きつけた主が、太郎冠者に謡を聞かせろと命じる。太郎冠者は、酒を飲まないとと謡えない、女の膝枕でないと声が出ない、などと駄々をこね、主は自分の膝の上で謡えと言う。太郎冠者は渋々主の膝に頭を乗せ、謡うことに・・・。


普通、逆です。
寝て声を出すのって、大変・・・なのに、謡っちゃうんですもの、すごいです、太郎冠者(というか、狂言方!)
起きては謡えない事をアピールする口パク(?)も、必死な顔芸(失礼)が笑えます。
最後、小細工がばれても、主は怒ったりせずに、太郎冠者の謡を見事だ、もっと聞かせろと褒めるんですね。
主が太郎冠者を追っかけての終わりだけれども、ほのぼの、仲良し2人組でした。


『錦木』
狩野了一さんの仕舞。
ぶわっと空気を抱き込むようなイメージのある人です。
包容力、というか、あったかい感じがしました。
・・・ところで錦木ってどんな話か知らないのです・・・。(後で調べようっと)


追加 調べました。
男が恋する女の家の前に錦をかけ、3年間プロポーズし続けたものの、成就せず死んでしまい、恨みがましく出てきた男の霊が、例によって(ギャグではない)僧の弔いで女と和解する、という話のようです。
男の一途で不器用な恋心を描いた、とも言えますが・・・今ならストーカーちっくなのでは?とも思ったり。


『紅葉狩』
平維茂(ワキ)が鹿狩りの途中、美女たち(前シテ)の酒宴に合流し、酔って眠ってしまう。舞を舞っていた女は、紅葉の木の辺りへ姿を消す(中入)。石清水八幡宮に仕える武内の神(アイ)が現れ、女に化けた鬼の事を話し、維茂に八幡大菩薩から遣わされた太刀を渡す。維茂が目を覚ますと、鬼女(後シテ)が現れ、襲い掛かってくる。維茂は太刀で鬼女と戦い、退治する。


季節も丁度いいし、シテ連は皆、朱の入った唐織で、華やかだし、最後の立ち回りも切れが良くて、スカッと気持ちいい曲ですね。
ちょ〜っと、もっさりとした印象も。(皆で謡ったりが、合ってないように思えて)
シテもワキもぞろぞろツレを引き連れて、作り物もあるし、舞台が溢れかえるかと思いました。(ワキ連はすぐに引っ込みましたが)
最初に、美女たちの一員として、狂言方が出て、維茂との間を仲介するんですが、その時に行った台詞が脱力系に笑えます。(「これもち、あれもち」とか何とか?)
先の『知章』と違って、こちらのシテとワキの視線は、敵意バリバリ。
あんなにガッチリ組み合うのって、初めてみましたが・・・相撲っぽい。(笑)
後シテの大口袴の着付けがなんだか変でした。ずり下がってきてるような??
(そうそう、舞台上の作り物の中で着替えてるのですが、大口袴なんて、容量オーバーにならないのだろうか?)


笛の杉信太朗さん、いいですね〜。(京都の方だと思いますが・・・違ったかな?)“闊達”と習字で書いて貼り付けたみたいな、勢いのある清冽なヒシギ。気持ちよかったです。


ところで、この曲では、後見に大島さんがついていました♪ (ああ、正面に座ってよかった〜〜 ←間違った能の見方 その2)
お隣に座ったご婦人も、大島さんのファンらしく、新聞の切り抜き記事やインタビューをまとめたものを持ってらして・・・頂いちゃいました♪(ありがとうございます)
帰り際に、「応援しましょうね」って約束しちゃいました。


外に出ると、秋晴れの一日。
雲の流れが速くて、きれいな空。
そんな感じの、会でした。