八世観世銕之丞静雪 七回忌追善能@観世能楽堂
どこを切り取っても上質の会でした。
連吟 百万 車之段 観世 榮夫 観世 銕之丞 他 銕仙会会員 総勢29名 仕舞 殺生石 観世 淳夫 実盛キリ 大槻 文蔵 雲林院クセ 観世 善之 野宮 梅若 万三郎 通小町 片山 九郎右衛門 舞囃子 松虫 観世 清和 笛 一噌 隆之 小鼓 鵜澤 速雄 大鼓 國川 純 一調 西行桜 観世 榮夫 太鼓 小寺 佐七 狂言 宗論 シテ(浄土僧) 野村 萬 シテ(法華僧) 野村 万蔵 小アド(宿屋) 小笠原 匡 能 鸚鵡小町 杖三段之舞 シテ(小野小町) 観世 銕之丞 ワキ(新大納言行家) 宝生 閑 笛 一噌 仙幸 小鼓 大倉 源次郎 大鼓 亀井 忠雄 (後見・敬称は略させて頂きました)
百万 車之段
連吟て、お素人会では見たことありますけど、プロのは初めてです。ずらずらっと、舞台に29人!しかも、こんな私でも見たことのある、そうそうたる面々。圧巻です。
銕之丞氏が「なむあみだぶつ〜」と始め、それに続いて題目の大合唱・・・ビビりました(笑)。追善だからって、お経を始めるのか?なわけはなくて、百万て「なむあみだぶつ」だらけの曲だったような。
すごかったです。ちゃんと揃うのがすごい(当たり前?)。けど、中でも銕之丞氏の声て聞き分けられるんですよねぇ。知ってるから、というのもあるんでしょうけど。好きなタイプの声です。(ミミモノトジ〜が耳に残ってるわっ;笑)
仕舞は印象に残ったものを。
殺生石の観世淳夫君は銕之丞氏のご子息で、中学生とのこと。そういえば、2月の式能で千歳やってた子ですね。あの時も思ったのですが、声変わりのようで、発声が辛そう。けれどピンと伸びた背筋は能楽師です。まだ身体が軽くて、安定してないですけど、溌刺とした舞で、これからが楽しみです。
実盛の大槻文蔵氏。関西の方なのでなかなか見る機会はないです。古木の潔さというか、きっぱりとした印象でした。
通小町の片山九郎右衛門氏。この方のすり足、大好きです(フェチ?)。指を折りながら日にちを数える型、もう鳥肌でした。ぶわーっと、後ろにシテの記憶が見えるようで。
西行桜
観世榮夫さんて、以外に小柄な方なんですね。昔はもっとギラついていたであろう鋭角さが、ちらりちらりと見えるようでした。
宗論
子供みたいに「ふんっ」と拗ねてみせる法華僧と、それをあしらいながらからかう浄土僧。坊主のくせに、まるで子供の喧嘩。相舞は見事でした。このお家の狂言は品が良いなぁ、と思います。これって、2人ともシテなんですね。
鸚鵡小町 杖三段之舞
小野小町の老後の話。帝からの歌「雲の上は在りし昔に変わらねど見し玉簾の内やゆかしき」への返歌を一文字で「ぞという文字こそ返歌なれ」と、つまり“や”を“ぞ”に変えると言う。(古文の知識を総動員して意味の違いを汲み取ってください。)これは鸚鵡返しというテクニックだ、と。小野小町は昔を懐かしんで舞を舞い、今を嘆く。
最初、どうしても銕之丞氏が老女(しかもかつての美女)に見えなくて・・・(爆)。老いて枯れた女性ではなく、きっかけがあればいつでもウィットとユーモアに満ちた会話の出来る、プライドの高い女性。・・・と言う点ではぴったりなのかな?
序の舞を舞いながら、昔に立ち返って自信に満ちた表情(面ですけど分かったんです)で宮中を濶歩する様子は、鮮やかに分かりました。でもって、足元がふらついてしまい、ワキに心配されるのを恥じて。高慢で、孤高を気取ってて、友達いなさそうですね、小町って。でも寂しがり屋さんなのかも、と、最後のワキを見送る所で伝わってきたりして。
余韻の残る、良い舞台でした。
囃子方が絶品。特に大鼓!亀井忠雄さん、いいですねぇ〜。笛も、もちろん小鼓も良かった。ワキの宝生閑氏、品良く小町に対峙して、良い雰囲気を引っ張ってきていました。
全体に、ぎゅっと束ねられた意識の強さ(統一感?)がありました。
追善という言葉に縛られて見ていたからかな?
観世流の華やかさよりも、鋭利で硬質な精神性を感じました。
良い会でした。
(ほぅっ)