第15回浅見真州の会@国立能楽堂

昨日、ちらりと予告しましたが、どちらへ行ったと思いました?
(横浜 vs. 千駄ヶ谷


独演三番能(!)です。
一人で、翁と三曲のシテを舞う、という。(だから、合計4番やってる事になる)
あなたはマ○ですか!?と言いたくなるような。(笑)

『翁』 弓矢立合
翁   浅見真州
    武田志房
    観世恭秀
千歳  浅見慈一
三番三 山本則直
面箱  山本泰太郎
笛   松田弘之
小鼓  鵜沢速雄(頭取)
    大倉源次郎(脇鼓)
    鵜沢洋太郎(脇鼓)
大鼓  亀井忠雄  


『山姥』 雪月花之舞
シテ  浅見真州
ツレ  鵜沢 久
ワキ  森 常好
ワキツレ 舘田善博
     森 常太郎
アイ  山本則直
笛   松田弘之
小鼓  大倉源次郎
大鼓  亀井忠雄
太鼓  金春國和
地頭  浅井文義


狂言 『末廣かり』
シテ  山本東次郎
アド  山本泰太郎
    山本則孝
笛   松田弘之
小鼓  大倉源次郎
大鼓  亀井忠雄
太鼓  金春國和


『求塚』
シテ  浅見真州
ツレ  馬野正基
    長山桂三
ワキ  宝生欣哉
ワキツレ 大日方 寛
     梅村昌功
アイ  山本東次郎
笛   藤田大五郎
小鼓  幸 清次郎
大鼓  安福建雄
太鼓  観世元伯
地頭  梅若六郎


一調 『松虫』
謡   山本順之
小鼓  北村 治


仕舞
『源氏供養』  観世清和
『弱法師』   観世銕之丞


『融』 十三段之舞
シテ  浅見真州
ワキ  殿田謙吉
アイ  山本則重
笛   一噌幸弘
小鼓  曽和正博
大鼓  亀井広忠
太鼓  金春惣右衛門
地頭  野村四郎


(後見・地謡、敬称は省略させていただきました。)


以下、あらすじ(一度書いたものは省略しました。また、かなりはしょっているものもあり)と感想です。


『翁』弓矢立合
小書き付なんて、初めてです。通常の翁の舞ではなく、3人での連舞で、弓作りの事を謡っていたような。翁面をかけることなく終わったのですが、翁が退場してから、直面だったことに、そういえば、と気付きました(遅いっ)。あのポーズ(翁の、袖を頭に載せて扇で口元を隠すやつ)も無し。そういえば、三番三とのガン飛ばし(にらみ合い;笑)もなかったなぁ。ちょっと『翁』ぽくなくて、残念。
『翁』の中で演じる大蔵流の三番三は初めて見ました。足拍子を強く踏みすぎてその勢いでぐらついていたように見えました。ちょこちょこ歩くのが、「働く小人」みたいで可愛い。
翁の「とうとうたたり〜」という謡で舞台の柱の間にカーテンが降ろされるみたいに感じました。舞台上を結界化しているような。でも、その結界は三番三が破って、祝祭を見所いっぱいに拡げる。そういう役割分担があるのかな?


『山姥』雪月花之舞
百万山姥(ツレ)という舞の名手が供を連れ(ワキ)善光寺参りに出かける。山の中でいきなり日が暮れ、山の女(前シテ)が現れる。女は自分が山姥であることを明かし、宿を貸す代わりに曲舞を見せて欲しいといって消える。夜が更けると鬼女(後シテ)が現れ、百万山姥の謡に合わせて曲舞を舞う。


ツレの装束が小粋な感じ。センスいいね、けど堅気じゃないねぇ、て(笑)。シテの山の女は、中年〜老女なのですが、色白で品があり、若い頃はさぞかし美人でしたでしょうね、と思わせるような。後ジテも、恐ろしげな形相ではあるけれども、気品がる面。(演技についての印象は薄いわっ;汗)
アイの語りが面白かった。「山姥は“どんぐり”がなる」とか。そんなことあるかー、とツッコミ入れたくなりました。他には「“ところ”(場所のこと?)がなる」とか、「“木戸”がなる」・・・て、それは“鬼女”だってば、というオチだったり。アイ語りて、真面目に平家物語なんかをやっちゃうものもあれば、こういう混ぜっかえしたようなのもあるんですよねぇ。
松田さんの笛、いいなぁと思いました。


『末廣かり』
何度か見たこれも、大蔵流のは初めてです。結構違いました。和泉流よりも説明的な台詞が多いような気がしました。
主が太郎冠者の囃子ものでほだされるハッピーエンドが、何度見ても微笑ましい。


『求塚』
2人の男に求愛され、悩み、自ら命を絶った女が、地獄での苦しみを語る、というもの。(すんません、こんな超簡単なあらすじで)


前シテの面も、これまた可愛い。小顔で、比較的くりっとした大きな目、ちょっと恥ずかしそうな表情。モテモテだったのも分かります。後の地獄で苦しむ女の霊も、疲れた、絶望した虚脱感はあるけれども、かつての美しさの片鱗が垣間見えるような色気のある面。地獄の責め苦の描写はなかなかに凄惨で、痛々しかった。
アイの東次郎さん、良かったです。若い方だと特に、ですが、語るのに精一杯で、情景の見えてこないことってままあるので。(生意気言ってすみません。)
あと、地謡の唸り上げる感じ(?)が、カッコ良かった。


「美しさ」て罪なのね、と考えさせられました。それを利用して(?)男達を競わせたから?手玉に取った悪女だとか?ま、全く縁のない話ですけどっ。「喧嘩はやめて〜 2人を止めて〜〜」なんてね。(笑)


一調の『松虫』、詞章がユニークです。虫の鳴き声が入ってて。小鼓の音で、ぽんぽんと虫が飛び出す・・・のはちょっと嫌ですが。
仕舞の清和さんて、しれっと舞うというか、さらりというか。銕之丞氏とは対極にある印象でした。
銕之丞さんの声、好きです〜。(『弱法師』のキャラは合ってないと思うけど)


『融』十三段之舞
後シテは「麻呂」な出で立ち(そりゃ、平安時代の貴公子ですけども)。冠には花を挿して(はい、挿頭花です;笑)、そこから黄色い糸が5本位ずつ左右の肩まで垂れていて、雄しべのようにも見え、なんだか色っぽい。装束も、金色の直衣(?)で、朱色の袴が腰の辺りに張り出して見えるのが、これまたエロカッコイイ感じ(笑)。いかにも洒落者で浮気者な優男。
先日「せぬひま」で見た時は、“月”の存在を強く意識し、やや暗いイメージだったのが、全く違いました。この世の春を謳う、垢抜けた浮かれ者。役者が違うと、違うものです。
笛の一噌幸弘さんと大鼓の亀井広忠さんで飛ばしてました。途中「はぁっ」という掛声で、ブチッと切れたのが分かりました・・・ストッパーが(笑)。爽快でした!いかん、嬉しくてにやけてしまう。




全体的な感想としては、浅見真州さんて、とてもセンスがいいな、と。ファッションセンス(笑)のことです。面がどれも美しい。装束の色合いに捻りが効いている。パンフレットも凝っているしね。あと、役になりきるタイプなんじゃないかと思いました。そしてエロティック(爆)。


終了予定時刻をかなりオーバーしていたようです。終わって時計を見たら7時10分。11時から、休憩2回(合計30分)で、翁と、能3番と、狂言と仕舞と。演じる方も大変ですけど、見る方も疲れました。
最後、かなりすっきりしたので、気持ち良く帰りましけどね。