第46回式能〈第二部〉@国立能楽堂

<第二部>
『羽衣 盤渉』 (宝生流)
シテ  亀井 保雄
ワキ  高井 松男
ワキツレ  梅村 昌功
ワキツレ  則久 英志
大鼓  亀井 忠雄
小鼓  北村 治
太鼓  金春 惣右衛門
笛  藤田 大五郎


『文山賊』 (和泉流)
シテ  三宅 右近
アド   三宅 右矩


『玉葛』 (金剛流)
シテ   今井 清隆
ワキ   高安 勝久
間   高澤 祐介
大鼓  柿原 弘和
小鼓  幸 清次郎
笛  寺井 久八郎


『酢薑』 (大蔵流)
シテ   善竹 十郎
アド   大蔵 彌太郎


雷電 替装束』 (喜多流)
シテ   出雲 康雅
ワキ   副王 茂十郎
ワキツレ   永留 浩史
ワキツレ   副王 知登
間   善竹 富太郎
大鼓   安福 光雄
小鼓   亀井 俊一
太鼓   観世 元伯
笛   松田 弘之


祝言


地謡・後見は省略)


『羽衣 盤渉』
つい先日も見たよなぁ・・・しかも同じ宝生流。(苦笑)そのせいか、理解力は高まってました。謡も先の金春流に比べて、洗練されていて華やかな雰囲気。(笑)面が、やや冷たい、蒼ざめた表情のものに思えました。綺麗なんだけど近寄りがたいような。天女ですからね、それでいいのかな。
囃子方が貫禄ありました。笛の藤田大五郎さん、小柄なおじいさん、と思ったら激しい音色。どちらかというとシテよりも囃子の方に意識が向かってしまいました。


『文山賊』
初めての曲です。喧嘩をしているはずなのに、藪だ、崖だ、と言っては場所を変え、見物人がいないと張り合いがない、と、喧嘩を中断。この展開は『鎌腹』ぽいな、と思って見てました。山賊のくせに丁寧に遺書を残す、というのも妙ですが、そのうちに妻子のことを思って二人で泣き出してしまう・・・こういう急展開には、騙されたように巻き込まれると楽しいです。で、ふと我に返って、あれ?何も変わってないじゃん、とツッコむ。こういう日常の、ミニマムなシーンでは大きなうねりであっても、マクロの視点で捉えるとゼロなんだな、という、人間の小ささを考えてしまいます。(考え過ぎ?)


ここで15分休憩。
チョコレートと焼き梅食べました。


『玉葛』
初めての曲。源氏物語に出てくる“玉鬘”のことで、能ではその亡霊が妄執を僧に訴えるという夢幻能。
面は、憂いのある、セクシーな雰囲気。古そうだったなぁ。後場で髪を一房だけ前に垂らして狂乱を表しているのも、色っぽく感じました。動きが多く、華やかだな、という印象。あと・・・気のせいかもしれないのですが、シテからお香のようないい香りが。(いや、中入では気にならなくなり、後シテが出てきたら香ったので、やはりそうだ!)


帰り道、この日見た5番(翁を除いて)の中で一番良かったなぁ、と思っていたのですが、その割に詳細を憶えてない。(汗)初見だったから面白く思えただけだったのかな?いや、疲れていただけです、きっと。(苦笑)
囃子方は好みのタイプでした。(特に大鼓)


『酢薑』
これも最近見たばかり・・・いいですけど、別に。前回の方が好きだったかな。2人の笑い方が大胆で、突き抜けた感があって。今回は、しっかり、丁寧に、という雰囲気で、とても分かりやすかったです。さすがに続けて見ているから?ちなみに片方は同じ役者のはずなのですが、相手によって違うものなのですね。


雷電 替装束』
いよいよ最後!気をとりなおして、と自分に言い聞かせました。(笑)
切能て、凄いです。さすがです。面白いです。1日中能を見た最後でも眠くないです。(笑)
菅原道真の怨霊の胡散臭さとか、雷神になって出てきた厄介な暴れん坊のやりたい放題、気持ちいいです。謡のどっしり(でもあっさり)感と、シテの凛々しさ・逞しさは好みです。ちなみに、またもや勝手な事を言わせてもらうと、喜多流が一番揃ってる・まとまってる印象。
笛の松田さんの音色が、メロディアスで柔らかくて、聞き心地がよかったです。


能楽堂を出ると7時40分過ぎ。
長い一日でした。(こればっか)
一度に見すぎて、一体自分は、今、何をしているのか分からなくなったりもしましたが。(笑)
きっと昔は、もっと気楽な雰囲気で、見所の出入りも自由で、飲食しながら見たりしてたから、一日中やってたんだろうなぁ、と妄想したり。(そういうの、憧れますが、無理ですよね、今じゃ)
五番立て、こうして実際に見てみると、上手い構成だよなぁ、と思いました。


能にどっぷりの至福の一日でありました。