国立能楽堂1月特別公演

風が強い日でした。
途中、電車が速度落として走ってました。


番組は次の通り

張良』(観世流
シテ (老人/黄石公) 観世榮夫
ツレ (龍神) 馬野正基
ワキ (張良) 宝生欣哉
アイ (張良の従者) 大蔵千太郎
笛  藤田六郎兵衛
小鼓 林 光寿
大鼓 山本哲也
太鼓 助川 治


『酢薑』(大蔵流)
シテ (酢売り) 大蔵彌太郎
アド (薑売り) 大蔵吉次郎


『羽衣 盤渉』(宝生流)
シテ (天人) 武田孝史
ワキ (漁夫白龍) 村瀬 純
ワキツレ (漁夫) 村瀬 堤
ワキツレ (漁夫) 村瀬 慧
笛  一噌仙幸
小鼓 鵜澤洋太郎
大鼓 安福建雄
太鼓 金春惣右衛門


あらすじと感想
張良
老人(黄石公)は張良を試すため、激流に沓を投げ入れ、取って来させようとするが、大蛇(龍神)が現れて張良を襲う。張良が刀を抜いて応戦すると大蛇は恐れをなして、沓を差し出す。沓を老人に差し出すと、老人は張良に秘伝の兵法を授ける。


↑は主に後場のあらすじです。
前場は、張良が夢で見たとおりに老人と出会うところなのですが、超・短くて、シテは出てきたと思ったらすぐ引っ込んでいってしまいました。
中国の故事に倣ったものだそうで、装束も派手派手で、シテが沓を投げるわ、張良川で流されるわ、竜神とのバトルもあり、非常に見所の多い曲でした。
ワキが非常に活躍し、ワキにとっては重い扱いなのだとか。
張良が激流に飛び込んで、流される動きは、後ろ向きにくるりくるりと翻るように舞台いっぱいに回って、とても面白い動きでした。(フィギュアスケートのジャンプの着地の瞬間のような?)
シテの観世榮夫さん、ビブラート(?)が凄いです。
そしてその表情(面ですけども)はとても威圧感があって、恐かったなぁ。


ところで、曲自体にも興味はあったのですが、それより本日のお目当ては大鼓方の山本哲也さんでした。
囃子方はホントに個性的だと思うのですが、この方も独特だと思いました。
低いんです。
声も、大鼓の音も。
あ、いや、印象ですよ。(大鼓は大鼓だし、高く掛声を出しているのです、もちろん。)
カーン、と高いはずの大鼓の音が低く・・・堅く聞こえました。
重い、というか。(拳骨くらいの石つぶてを投げられている感じ。)
ずしりと、のしかかるような響きを感じました。
あれがコミの強さというものでしょうか?
ちょっと癖になりそうな。


『酢薑』
酢売りと、薑(はじかみ・ショウガの事です)売りが、その由緒正しさを言い合い、売り物の名前を言葉に織り込んだ 駄洒落 秀句合戦を行なう。


いかにも狂言です。
薑売りは「から」を織り込んで、例えば「から傘が干してある」と言えば、酢売りは「あれはげ傘」と言ったり。
そのたびにお互い「上手い」とばかりに笑いあうのですが、何度も何度も大笑いをしている二人を見ていると、釣り込まれてこちらも嬉しくなってきました。
笑いの効能はこれか、という感じにあったかくなりました。


『羽衣』
天女の羽衣を拾った白龍は、羽衣を返す代わりに舞を見せて欲しいと頼む。天女はその羽衣をまとって舞いを舞う、という、羽衣伝説をベースにしたものです。
謡の中に、「天つ風 雲の通い路 吹き閉じよ 乙女の姿 しばし留めん」とあって・・・百人一首だ〜と思いながら聞いていました。


軽やかな、天人の舞でした。
先の『張良』が派手派手だっただけにやや地味に思えたけれど・・・。
笛の一噌仙幸さんの音が、清やかで、浮遊感があって、とても心地良かった。
(ちなみに、藤田六郎兵衛さんのは艶っぽいというか、情感たっぷりなのが魅力だと思います。)


う〜ん、ちょっと偏った感想かな?
(大体、囃子方目当てってのが間違った観能態度という気もします。自分で言うな、て。)


国立能楽堂はまだお正月モードなのか、舞台の上ぐるりに縄と御幣(?)が飾ってありました。
ああいうのを見ると、清々しい厳粛な気持ちになるって、日本人の刷り込みですね。