きっかけ

ある意味、能への興味のきっかけでもあった本です。


からくりからくさ (新潮文庫)

からくりからくさ (新潮文庫)

亡くなった祖母の家に住むことになった主人公の女性と、そこに下宿する3人。主人公の持っている人形の「りかさん」を巡って、彼女たちの不思議な結びつきが明らかになってくる。


出てくる人物は、染色とか織物といった手仕事に関わる人ばかりで、彼女たちの会話の空気感、彼女たちの家はとても穏やかで、居心地のいい空間に思えます。
食費対策で庭の雑草を食べたりするのですが、危機感とか貧相さはなく、「おばあちゃんの知恵袋」的でほのぼの。
彼女たちの間に繰り返し現れるイメージとか、何かに捕われたような感じとか、不思議で、ちょっと怖いような。
お互いへの信頼や、気遣い、思いやりや優しさといったものに溢れた本だと思います。
ちなみに、私はこれを友人への入院見舞いに持って行ったのですが、好評でした。


能面の出てくるシーンがあるのですが、当時は「小面」と「般若」しか知らなかったので、その他のものを調べようとネットに潜ってたら・・・というのが前述した能へのきっかけです。
(平行して漫画『陰陽師』もなのですが。未知の言葉のたくさんあるものってムキになるようで。)
だから、最初は能面とか装束への興味だったはずなのです。
美しいもの見るの好きですし。
それが・・・能楽堂で聞いた素囃子の迫力にノックアウト。(笑)


梨木香歩さんの他の作品は・・・

裏庭 (新潮文庫)

裏庭 (新潮文庫)

まさしく和製ファンタジーです。
日本の古い昔話のエピソードが散りばめられていて、土臭いような、湿った土間のような匂いを感じます。
少女の成長を描いているのですが、とても残酷で、苦しくて、絶望感で読むのが嫌になってしまったのを通り越すと、爽快感のある涙があります。


この人は伏線をはるのが上手いというか、伏線が多くて、中心を見失いそうになります。
何度も読むと、だんだん繋がってきて、より理解が深まります。
共通するのは、人であることの残酷さと、優しさ、かな?