ダイナーズクラブ 能楽囃子コンサート@国立能楽堂

コンサート!

能楽師大鼓方 亀井広忠プロデュース”とも冠してあります。
状況説明がそのままタイトルなんて、ひねりも何もありませんが。
(だからって、「ドキドキ☆HAYASHI〜2007夏」なんてアイドルみたいなネーミングも嫌ですけど)


ダイナーズカードの主催なので、ちょっとだけおしゃれな格好で行きました。(笑)
ちなみに、私は会員ではありません。(モグリ?)


番組は次の通り。

囃子競演『獅子』
笛	一噌 幸弘
小鼓	田中 傳左衛門
大鼓	亀井 広忠
太鼓	田中 傳次郎

素囃子『宝生流 延年之舞』	
笛	一噌 幸弘
小鼓	成田 達志
大鼓	亀井 広忠

一調四題
大鼓一調『俊成忠度』	
謡	味方 玄
大鼓	亀井 広忠

小鼓一調『鐡輪』
謡	観世 喜正
小鼓	成田 達志

太鼓一調『松山鏡』	
謡	谷本 健吾
太鼓	助川 治

笛一管『鈴之段』	
笛	一噌 幸弘

舞囃子道成寺組曲		
シテ	味方 玄
地謡	観世 喜正
	谷本 健吾
笛	一噌 幸弘
小鼓	成田 達志
大鼓	亀井 広忠
太鼓	助川 治
		
祝言囃子『三番叟揉之段』
笛	一噌 幸弘
小鼓	成田 達志
大鼓	亀井 広忠


事前告知と番組構成が異なっていたのは、田中兄弟の本業の都合だそうです。
「こういったかけもちは良くあることです。」だって。


(文中敬称を省略していますが、ご容赦下さい。)


囃子競演『獅子』
言わずと知れた、亀井・田中3兄弟のレパートリー。
能楽囃子”コンサートなんじゃ?というツッコミは置いといて。(笑)
以前も思ったけど、かけ声がそっくりで面白い。
いつかシャッフルして演奏して欲しい・・・。


能楽堂が初めての方が多いのか、演奏が始まってからも人の出入りがあったりして、見所に落ち着きがなかったのが残念。
「露」の無音の間が、それを鎮める効果があったのが感激。


<広忠トーク1>
獅子の余韻も冷めぬまま、どころか、切戸に引っ込んだと思ったらすぐにマイク片手に広忠が出てきました。
プログラムに書いてなかったので、驚きました。
↑の「良くあること」説明はこのときのもの。
他に、この企画の経緯や、囃子方の役割などの話。
一人だったので話が逸れず(笑)、必要十分的確な説明に終始していました。
次の『宝生流 延年之舞』は葛野流の最高奥伝とのこと。(「秘伝のタレ」とか言ってましたけど・・・)
なかなか観られるものでもないので、良い機会だからと番組に入れたそうです。
「“延年”は命を延ばす舞なのだけれども、大鼓にとっては、命を縮める小書。それだけ心臓にも脳にも負担がかかる。1回やれば1,2年は寿命が縮む。」


素囃子宝生流 延年之舞』
とーーーっても個性的な3人である。
どれを聞いていても美味しい。


笛は不隠だし。
小鼓はピカピカしてるし。
大鼓は怖いし。
(↑何の感想だ?)


逆に、ぐるぐるっと混ぜて聞くのは難しい。
だーんだーん、馴れてくると、見えてくる。
モネっぽい。


例えて言えば。
笛から水が噴出し、舞台一面に出来た海の満ち干きを小鼓と大鼓で引っ張り合ってる感じ。
月と太陽


決して邪魔をし合っているわけではないけれども、協力もしてないんじゃ?
こんな時、シテというのは、囃子方にとっての共通の目的なんだな、と思う。
共通の敵かもしれないけど。(笑)


1年分の命を有難く聴かせていただきました。
同じくらい、こちらも減った気がするけど・・・。(休憩中も心臓バクバクしてました)


一調四題
大鼓一調『俊成忠度』
わーい、味方さんだ♪
さらさらっと、耳に心地良い声。


小鼓一調『鐡輪』
ツヤとハリでは互角の美声対決。(笑)
喜正、力が入りすぎなのか、一語目が強く響きすぎて、少し聞き苦しかった。
段々良くなってきましたが。


太鼓一調『松山鏡』
谷本健吾、ずーんと、内側に響く声、丁寧な印象。
同じ観世流でも、違いが分かるようになってきました。(これが「違いの分かる女」?


笛一管『鈴之段』
幸弘の本領発揮。(笑)
かなりアレンジ入ってました。(私が聞いてても分かるくらい)
楽しかった!


この能楽囃子コンサート」は、広忠プロデュースのため、「広忠コンサート」とも言えるけれども、それと同じだけ出演している幸弘の存在なしに成り立たない「幸弘コンサート」でもあるんだよなぁ、とつくづく思わせられました。


<広忠トーク2>
先の幸弘一人舞台に苦笑(?)しつつ登場。
それぞれの一調をまとめて聞く機会はそうないので、番組に取り入れたとの事。
『せぬひま』でやってますよ〜〜〜!!とちょっと抗議してみた。心の中でだけど。)


そして次の『道成寺組曲』の説明。
もともと、能『道成寺』の面白さを囃子だけで表現できないかと、笛方の藤田六郎兵衛、小鼓方の大蔵源次郎が作ったもの。
そうすることにより、本来なら1時間35分から50分ほど(やけに具体的)かかる曲を、20分に短縮することができた!(←表現が妙に笑える)


舞囃子道成寺組曲
面白かった!!!!
構成は、シテの名宣、大鼓の一調、笛一管、乱拍子、急ノ舞、祈リとなっていて、単なる舞囃子ではなく、能1曲のストーリーをコラージュしてあるので、シテは、白拍子であり、蛇女なんです。
けれどこういう紋付袴&直面では、役者の個性が素通しにもなる。
その2重性が、怖いと言うか、恥ずかしいと言うか。(←私が恥ずかしくてどうする?)


幸流の乱拍子って初めてかも。
声を伸ばさないのね・・・それだけ無音の時間が長くて、恐ろしい。
いつどこからかかってくるか分からない敵に囲まれている感じ。(←そんな経験は無いけど)
鐘入りはどう表現するのかと思ったら、その位置ですとんと座り込み、すぐ祈リに移行。
本来ならここで間狂言、ホッと一息(?)のはずが、プポプポと容赦なく退治される模様。
ずるり、と蛇女が立ち上がると、鐘の中に閉じ込めたかったはずの生々しい怒りと嫉妬が見えた気がした。
見えざるワキとの戦いは、具象が無いだけにシテ自身の心の葛藤にも思えたり。
そして。
鐘の位置で座り、幕の方を向いて、シオル型をしました。
え?泣くんだ!?
いつもワキに苛められて幕(日高川)に追い込まれてしまうので、知らなかったけど。
それとも、今回限りの演出か?
なんだか、ますます蛇女が可哀想に思え、『道成寺』を観る意識が変わりそうです。


<広忠トーク3>
「汗で(袴の)変なところにシミができていますが」と登場。
(お召し換えが多いのは、そのためか?単なるオシャレだと思ってましたが。)
「『道成寺』みたいなものを演奏した後でしゃべるというのは、意識の切り替えが大変」
そう言いつつ、シテ2方の会の宣伝をしてました。

6月23日「観世喜正の会『影清』」(主宰:観世喜正)宝生能楽堂
6月30日「テアトル・能『融』」(主宰:味方玄)宝生能楽堂


西洋音楽のコンサートやライブと違って、能ではアンコールやカーテンコールはしないので、祝言囃子として『揉之段』をアンコール代わりとします、とのこと。
『三番叟』は、亀井家のお家芸とも言える曲。故亀井俊雄(広忠の祖父)と狂言方の故野村万蔵野村萬斎の祖父)が作り上げ、亀井忠雄(広忠の父)と野村万作(萬斎の父)も得意としてきた。自分も萬斎師と一緒にすることが多く、得意なものにしていきたい、というようなことを話していました。
十分得意曲だと思うのですが・・・本人にとってはまだまだなのでしょうか?(それとも謙遜?)


祝言囃子『揉之段』
これも、幸弘はただでは終わらせてくれませんでした。(笑)


そういえば、この会の曲目ってCDと同じですね。(『猩々乱』がないけど)
家に帰ってから聞いてみたのですが、広忠上手くなってますね。(←ナニサマ発言ですが。)
若さの勢いに任せたざらつきが、洗練されたワイルドさになったようです。
「天才少女歌手」が更にボイトレして5オクターブ出るようになった感じ?


面白かったです。
お囃子好きにはたまりません。
全曲同じ人というのも、珍しいですし。(そもそもこういう囃子ばかりの会が珍しい)
ああ、でもね!
迫力と緊張感は『せぬひま』の方がすごかったぞ!(←身びいき)(←身内でもなんでもないケド)


ふと、楽屋はどうなってるんだろうと、どーでもいい事を考えてしまいました。
いつも通り囃子方皆で一緒の部屋にいるのだろうか?(笑)