せぬひま第4回公演@大江能楽堂

何を隠そう、一年で一番楽しみな公演!(←バレバレ?)
もう4回目になるんですね。
(ということは、私も能を観始めて4年になるのか・・・う〜ん、おバカなままなのに。)


京都の若手(?)囃子方3人の主催する公演「せぬひま」。
(↑“若手”という言葉に思わず疑問符を差し挟んでしまいましたが、十分“若手”です。この世界では。)
毎回、能の精神性や、囃子の主張を、マニアックにストイックに見せて(聞かせて)くれる、と〜っても疲れる公演です。(笑)
今回は「神遊」という、東京で活躍する能楽師5人からなるグループとの競演でした。


番組は次の通り。

素囃子
神舞
大鼓	河村 大
小鼓	吉阪 一郎
太鼓	前川 光範
笛	森田 保美

一調
錦木	片山 清司
小鼓	観世 新九郎

橋弁慶	観世 喜正
小鼓	吉阪 一郎

杜若	吉浪 寿晃
太鼓	観世 元伯

春日龍神	分林 道治
太鼓	前川 光範

素囃子
花重蘭曲
大鼓	柿原 弘和
小鼓	観世 新九郎
太鼓	観世 元伯
笛	一噌 隆之

舞囃子
弱法師 盲目之舞
	片山 清司
大鼓	河村 大
小鼓	観世 新九郎
笛	一噌 隆之
地謡	分林 道治
	観世 喜正
	吉浪 寿晃

融 酌之舞
	観世 喜正
大鼓	柿原 弘和
小鼓	吉阪 一郎
太鼓	観世 元伯
笛	森田 保美
地謡	分林 道治
	片山 清司
	吉浪 寿晃


今回はアンケートを出さずに帰ってしまった。(すみませんっ)(←誰に謝ってるんだか)
その代わり(?)レポをだらだらと書いていたので、無駄に長文な上に文体が乱れてますが、ご容赦下さい。


それぞれのユニットの、気心が知れた信頼感の上に緊張感を保っての素囃子は、迷いが無くて、容赦なく打ちのめしてくれるから、安心できる。(←なんつー表現)
『神舞』「せぬひま」メンバーで。「まだまだ若手っ」と主張しているような、鮮烈さと気合。
河村大の大鼓、好きだ〜♪(←私ってば浮気モノ)
終わって気付くと、手が汗ばんでいた。1曲目からこれだなんて、先が思いやられる。(嬉しい悲鳴)


『花重蘭曲』「神遊」メンバー。なんだか、こちらの面々の方が落ち着いているような?パンフレットによると中之舞、鞨鼓、鷺、神楽、早笛、獅子が織り込まれているとのことで、盛り沢山ジェットコースターのような演奏に、目の前がくらくらしてきました。(←褒めてます)


それにしても、互いにライバル心むき出しで、気合が入りまくり。
その大人気なさが、なんだか嬉しい。(笑)


一調では、シテと鼓の間の駆け引き、見所に対する主張、そして楽屋へ向けての牽制と、全方向性にバリバリと意識を伸ばしていつつ、中心がぎゅぅ〜〜っと、重い。
そして!
幕の内側からも、強い圧迫感が伝わってきて、脇正面にいた私は、両方から挟み撃ちにされてしまいました。
うわわぁ〜〜。(歓喜の叫び)


『橋弁慶』を謡い終わった観世喜正は、満足気にニヤリ・・・気のせい?
吉阪一郎の音てストイックで、喜正のツヤッと華やかな謡とは志向性が違うと思っていたのですが、併せるとなかなか面白いものでした。引っ張り合ってる印象。


舞囃子『弱法師』では、片山清司の線の美しさに見とれました。
一調でもそうだったのですが、彼の謡はとても情がこもっていて、彼の思い描く背景をこちらにも見せてくれているような気がする。盲目の弱法師自身には見えない、周囲の風景が見え、更に「日想観」で見えた光景を重ね合わせると、モノクロがカラーに変わった。その瞬間、この人すごい、と思った。(←今更?)ドラマチックではなく、ひたひたと寄せる想いが温かい。
舞い終えて目を開けた時(目を閉じて舞っていた)、ふっつりと何かを切り離したみたいで、ああ、やっぱりこの人はさっきまで弱法師その人だったのね、なんて思ったり。
観世新九郎の小鼓、実はあまり好きなタイプではないのですが、これは良かったなぁ・・・。一調も。シテとの相性が良いのかも?


『融』は、囃子も舞も魅力的で、好きな曲の一つです。
観世喜正の大臣っぷり(笑)、見事でした。大きさと華麗さを併せ持ったシテですね。私は何故か、いつも彼の手ばかり注目してしまいます。(←フェチ?)
森田保美の笛、聞くたびに好きになっていく。さあっと霧がかかって、ミルク色の月明かりを感じた。
柿原弘和の大鼓は、堅くてしっかりしていて、これまた結構好きだったりする。真面目な音だと思う。(←意味不明)


流儀の違い、東西の違い、それ以上に個性がありますが、音の調子も雰囲気も面白いように対照的な取り合わせでした。
以前ワークショップで話していたように、江戸の方が調子がやや高い。派手にも思いました。装飾的、というのか?
対して京のは音がまろやか。大鼓が一番わかりやすい。太鼓はこちらの方が華やかに聞こえました。


ストレートからカクテルまで、味わいも様々に酔わせてくれました。(笑)
メルマガで茂山千三郎がライバルに対する意識をオセロに例えて、「相手にやられっぱなしの戦況で、一枚置いたら全部めくれたみたいな」と言っていたのですが、それがよく分かる公演でした。


次はいつかなっ♪(←気が早い)