短期能楽教室 発表会レポ

お待たせしました、発表会の御報告です。(誰も待ってないって?)


〜プロローグ〜
挿頭花は驚いた。
「何たる失策であることか!」(『山椒魚』by井伏鱒二


着つけのこともあり、早目に、それこそ10時前に到着するように家を出たのですが・・・。
駅に着き、止まっていた電車に乗り込んで、お稽古テープを聞きながら出発を待っていると・・・電車が動き出した途端、びっくり。
反対方向!?(パニック)
地元のローカル単線=本数が激少なのに〜。(涙)
無茶苦茶慌てました。
急いでケータイを使って、路線検索です。
そのまま反対方向で突き進んで、どこかで乗り換えるほうが早いのか。
それとも、次の駅で戻る方が安全か?(結局こちらになりました)
もう、もう、本番前から、冷汗やら、動悸やら・・・不安な一日の始まりでした。


〜本番前〜
ぜーぜー言いながら、青山の能楽堂に着いたのは、10時半頃。
控え室に入ると、皆が心配して下さっていました。
お稽古仲間に手助けしてもらいながら着物を着、帯と袴は先生にお願いしました。
「僕のとっておきのを貸してあげよう」ということで、写真の帯(11日の日記の)を締めていただきました。
仕舞用に持ってきたのだけれど、もう一つあるから、とのこと。
うわわわわ、責任重大というか、帯負けしちゃう気満々な、妙なプレッシャーが・・・。(汗)
袴もピシッとつけてもらい、気合が入りました!
そんなこんなで、気付けば本番5分前。
舞台裏の楽屋に全員集合し、先生から進行の段取りと、細かい事の最終確認。
日常とは違う自分になって」と先生。(先生のこういう表現て、好きだなぁ)
御挨拶して、いざ、舞台へ!!


〜初舞台!〜
・・・と言っても、初番の素謡『鶴亀』はお留守番・・・。
モニターを見、舞台から聞こえてくる声を聞きながら、そわそわと落ち着かないったら。
立ったり座ったり、歩き回って、仕舞のおさらいしたり。
もっとも、この後は出ずっぱりで、そんな緊張を持つ暇はなかったのですが。
次の『吉野天人』で、正真正銘、初舞台!
舞台に出て、眩しくて、扇の置き方とか、細かいことが吹っ飛んでしまいました。
役付だったのですが、緊張のため声が上ずって、地謡と音程がズレてしまいました。(ううっ、悔しい〜)
これはこの後、先生に「そのまま押し切るように」との御指摘を受けました。
続く仕舞では地謡を。
いつも見ている仲間の仕舞、応援するような気持ちで謡いました。


その後、5分程の休憩が入り後半へ。


〜お仕舞でお終い〜
素謡『鶴亀』『吉野天人』と地謡が続き、声も辛く、足も痛く・・・『吉野天人』では片足痺れて、立てないかと冷や冷やしました。(ホント、プロはすごい。←比べるなって?)
それでも、これが思いっきり謡える最後だと思って、精一杯やったつもりです。
そして、いよいよ仕舞!
ミスなく出来たと・・・思います。
あれ〜、あまり覚えてないや。(笑)
真正面に先生が扇を(しかも開いて)持って座っていて「いつでも指示出せるよ〜」状態だったのが可笑しかったです。
しかし果たして、いざ止まった時にそちらを見る余裕があったとは思えない・・・(笑)


以上で、一期生による発表は全て終了、楽屋で御挨拶をした後、先生の仕舞(番外)を見るために皆で見所へ。
先生ったら、ちゃんと袴を着替えるんですね。(変なとこ感心してしまった。)
能『海士』の玉取りのシーンの『玉ノ段』。
ドラマチックな謡に、写実的な型で、分かりやすい仕舞です。
あまり生々しくなく、さらりと舞われていたように思いました。
ああ、カッコイイ〜〜〜あんな風に舞いたい・・・なんて無謀な夢想をしてました。


〜名残惜しの〜
最後に、全員で舞台で記念撮影。
楽屋で改めて先生に御挨拶した後、着替えて荷物をまとめ、見所へ。
午後からの、先生のお弟子さんのおさらい会を見るために。
数番見て帰るつもりが、結局最後まで見てしまいました。(先生の番外仕舞『融』もあったし)
やはり、皆さんキャリアが長いだけあって、落ち着き方が違うというか、堂々としていて、素敵でした。
地謡がなかなか出てこない、見台が壊れる、などの爆笑シーンもありましたが)
同じ柴田先生にお稽古していただいているのに、『鶴亀』のテンポの良さ、『吉野天人』の節回しが結構違うのに驚きました。
それにしても、柴田先生と書生さん、ほとんど全てに地謡で出ていらして・・・よく声が続くなと感心するやら心配するやら・・・能楽師って、体育会系だわっ。
書生さんが楽屋の隅で百番集見ながら謡を確認(?)し合っていたのが、微笑ましかったです。(そりゃ大変ですよね)


そうそう、着替えている時に、年配のお弟子さんから「皆さん声がパーッっと出てて、やっぱり柴田先生のお弟子さんて感じね」と言われて、ちょっと嬉しくなりました。
弟子は師匠の鏡だと言いますが(言わない?)、こういうことかな。
あと、挨拶は「おめでとうございます」なんですね。(へぇ〜)


リクルート(笑)〜
柴田稔先生主催の『初心者のための短期能楽教室』では2期生を募集しています。
詳しくは柴田先生のブログへ。
  →能楽師・柴田稔 Blog
2月スタートなので、興味のある方は早目に先生とコンタクトを取ることをお勧めします。
(途中からでもOKですが。)


〜最後に〜
舞台の上は、明るかったです。
最初は、見所を見る余裕どころか、謡本から目を上げられませんでした。(覚えていないから、という意味ではなく)
だんだん、目も慣れ、空気にも慣れ、視線が気持ちいいかも♪と思い始めたら終わりなんて、残念。
普段とは違う緊張感も、クセになりそう。


振り返れば8月から7ヶ月間、御一緒させていただいた短期能楽教室一期生の皆様、ありがとうございました。
見に来てくださった方々、ありがとうございました。
楽屋でお手伝いいただいた、先生の息子さん、書生の先生方、ありがとうございました。
何よりも柴田先生、当初の予定を大幅にオーバーして気前良くお稽古をしてくださり、本当にありがとうございました。


お稽古を始めてから、能をもっと面白く見られるようになりました。(分かりやすくなった、というか)
楽しかったし、勉強にもなったし、舞台で舞えるという素晴らしい経験が出来、感謝と幸福感でいっぱいです。


そしてそして、このような拙いお稽古メモ記事に、毎度気長にお付き合いいただいたPCの前のあなた!
ありがとうございました。
アカデミー賞のスピーチ並に「ありがとう」の大盤振舞で、自分がとても謙虚な人間になった気がするのは、きっと気のせい。)