第14回テアトル・ノウ@十念寺(京都)

京都の観世流味方玄(みかたしずか)さん主宰の会。
「古風再現 座敷能」というサブタイトル通り、お寺の座敷での演能。
庭に面した戸がすべて外されて、縁側まで客席があり、外のような、内のような空間。
徐々に日が暮れるのも、夜風もダイレクトに感じられ、何とも言えない雰囲気でした。

お話	味方 健	
		
仕舞	鐘之段	梅田 邦久
	雨之段	味方 健

井筒	シテ	味方 玄
	ワキ	宝生 欣哉
	間	茂山 忠三郎
	笛	藤田 六郎兵衛
	小鼓	吉阪 一郎
	大鼓	亀井 広忠

 (地謡・後見は省略しました)


まだまだ、整理がつきません。


蝋燭の灯りが、思ったよりも明るいんだな、とか。
その、灯に映る面や装束が、ぞくぞくするほど美しかったとか。
大鼓の音が、庭に響いて、ふっつりと消えていくのとか。
小鼓の音が、シテの女の鼓動に聞こえたりとか。
笛の音が、こっちとあっちとの境目を揺らして、あらゆるものを融けあわせてしまったりとか。
ワキが、あくまでさりげなく、何気なく、そこに居て、シテを見届ける大切さとか。
間の、拡散する思考をまとめ、更なる展開へと期待を抱かせるような、物語りとか。
4人の、さらさらっと主張しすぎない、滋味ある地謡


そしてシテの、するりと耳に馴染む、光る声。
前シテは、女で。
後シテは、男になった、女で。
圧倒的に、美しくて。
蝋燭の灯りの中で、ほんの少しの表情の変化も、よく分かる。


能を見ているというよりも、本当にその場に霊が現れ、物語が展開されているような。
ほわりと現れ、いつの間にか消えてゆく。
夢幻能って、こういうものか、と。


いつまでもいつまでも、こうしていたい、この余韻を味わっていたい、と思って。
蛍光灯の白々しい明かりにさらされ、やっと、動けるようになりました。
それでも、しばらくは、インプットもアウトプットも、出来ない、したくない状態。


時折漂ってくる、香の匂い。
さわさわと木々を揺らす夜風。
目も、耳も、鼻も、触覚も刺激されました。