花比べ

実は梅の方が好きです。
桜より。


だって、食べられるし。
梅林の中に入った時のあの清冽な香りは、全身の細胞が清められるようだし。
ごつごつと老成したような樹に、艶やかな花をつけるし。
地味でもあり、キンキラキンでもあり、原色で描かれた宗教画のような。
「うめ」というと、鄙びた野暮ったさがあるけれど、
「バイ」と音読みすると、何やら刺激的な雰囲気を醸し出す。(気がする。)


桜は・・・その名前が好き。
「さくら」と、ひらがなで書いた丸みが優しい。
「サクラ」となると、一面ピンク色の景色が浮かぶ。
声に出して発音すると小気味良い。
名前もろとも愛されてきた花なんだな、と思う。


大きな桜の下に立って、見上げるのが、好き。
そのまま呑み込まれそうな、ぞわぞわした生命力を感じるから。