三響会@新橋演舞場

三響会
亀井&田中家祭(笑)、夜の部です。
演舞場エントランスに忠雄さんが立っていらして、びっくりした。
・・・ええ、普通に、いたんです。
(「こんばんは」と間抜けな挨拶をしてしまった・・・心の準備が〜)

狂言・歌舞伎『二人三番叟』 野村萬斎市川染五郎
舞踊『島の千歳』藤間勘十郎
能と長唄による『船弁慶』 観世喜正
歌舞伎『保名』市川亀治郎
能と長唄による『石橋』梅若晋矢・中村勘太郎

アナウンサーが出てきて、司会進行・・・というか、前説(?)と幕間の解説など。
その際、「拍手は終わりまで控えて」と「お目当てが終わっても帰らず最後まで」を強調していた。
これには・・・苦笑です。

『二人三番叟』
舞台上に二つの小舞台。
それぞれ奥に向かって橋掛かりが伸び、左に野村萬斎さん、右に市川染五郎さんが座している。
二人とも黒の紋付袴で仕舞型式。
舞台と舞台の間を繋ぐように、囃子方が7人。
やたら人数が多い?と思ったら、笛は歌舞伎組の福原寛さんと能組の一噌幸弘さんのWキャスト(?)で、小鼓3人、大鼓、そして何故か太鼓が。
二つの舞台を繋ぐもう一つの橋の上には三方、その上に鈴。
右手には三味線、長唄組。
小鼓が速い!今まで聞いた中で最速のテンポの揉み出し。
舞がついていけるのかどうか、心配になった。
まず狂言バージョンからスタート。
幸運にも萬斎さんの三番叟を見るのは4.5度目。(0.5というのは劇中劇のダイジェストだったため)
見るたびに凄いなあ、と思う。
私が能・狂言を見るきっかけとなった曲&人であるだけに、思い入れも深いし、何より囃子も舞も一番好きな曲。
力強く踏む足拍子、キレのある足捌きにピンと緊張感のある背すじ。
うーん、カッコイイ。
揉みの段が終わったとたん、揉み出しがリプレイ、歌舞伎バージョンスタート。
囃子方はさぞかし大変でしょうに・・・見所は大喜びですけど)
「おおさえ、おおさえ」と走り出てくるのはセリフともども同じ、だが、節回しが違う、テンポが違う。
歌舞伎は、正面を意識した振り付けだと思った。
(正面を向いて足を開いて立ったまま、拍子を踏むとか。)
狂言方のように舞台をまんべんなく清める祝祭性は少なく、あくまで“見せる”物になっていた。
それはそれで、面白いけど。
ところどころ同じ振り付けがあったりして、能→歌舞伎への変化を感じられた。


『島の千歳』
小鼓に田中傳次郎さん。藤間勘十郎さんとは個人的にも親しいのだとか。
そういえば世田谷でのWSに出ていた人だと、途中で気付きました。
踊りがなんというか・・・粘っこいです。
あの時は『道成寺』の蛇だからだと思ったけど、この人の個性なんだろうなあ。
小鼓の音がとてもバリエーションをもって聞こえ、面白かった。
桜の花びらが散って、春の光景。


船弁慶
笛;福原寛、小鼓;田中傳左衛門、大鼓;亀井広忠、太鼓;田中傳次郎
舞台左に能の地謡、右に三味線と長唄、正面に四拍子。
舞台奥には唐織がライトアップされ、静を模しての囃子のみの前場
カーテンが下りて唐織が隠され、知盛の霊が登場。
何故か紋付袴で出てくるとばかり思っていたので、きちんと装束をつけているのに驚いた。
ぞわぞわと泡立つ波の上、義経一行と退治する知盛。
観世喜正さんの大胆で端正なスタイルはこの役にとてもしっくりするように思った。
基本は能なのだが、義経や弁慶のセリフ(つまり子方やワキ)は歌舞伎の唄で。
三味線での男舞って、リズム感ありまくりで、かっこいいったら!
エンターテイメント性がアップして、とてもわかりやすいものになっていると思う。
(もともと分かりやすい曲ではあるが。)
弁慶に祈り伏せられて帰ってゆくのも、負けた感はなく、とても不敵なものだった。
面白かった。


『保名』
小鼓に田中傳左衛門さん。
舞台の左手から右後方に向けて斜めに橋掛かりのようなものがあり、安倍保名が片肘をついてしどけなく横になっている。
その周りには菜の花、右に囃子方
これも衣装を着けての曲。
歌舞伎は、男役でも色っぽいのですね。
こういうのを優男というのかな?


『石橋』
笛;福原寛・一噌幸弘、小鼓;田中傳左衛門、大鼓;亀井広忠、太鼓;田中傳次郎
またもや笛Wキャスト(笑)。
左に地謡、右に三味線と唄方、左右に橋掛かり、正面に囃子方
いきなり獅子の登場楽から始まるのではなく、前場もどきが少し。
この組み合わせはCDで聞きこんでいるので(笛が一噌さん)、耳馴染みが良い。
露の音も、獅子の吼え声も、たっぷり堪能。
いつもは何かのイメージを思い描きながら見る(聞く)のだが、この時はそのものを純粋に楽しめたと思う。
そして左から白獅子、右から赤獅子がそれぞれの装束をつけて登場。
それぞれの獅子の舞を見せる。
比べてみると、歌舞伎の獅子は超・派手!!
「見せ場ですッ」てのが分かりやすい。
そして、それに対して拍手を送りたくなる。
が、ぐっとこらえて・・・しかしあの頭をぐるぐる振り回したときにはさすがに拍手が起こった。
異種格闘技戦のようでもあった。
一畳台に二人で乗っているところは、なんだか可愛らしくもあり。
異民族巻の交流のような、敵対のような、でも仲良しのようにも見えたり。
面白い!面白い!面白い!!
終わった時には割れんばかりの拍手。
中にはスタンディングオベーションも(単に見えにくいからかもしれないけど?)。
なので、かどうかは知らないけれど、一度下りた幕が上がり、カーテンコールもどきがありました。
ここで歴然とする、能と歌舞伎役者の対応の違い。
中村勘太郎さんは台から下り、お辞儀をしましたが、梅若晋矢さんは、トメの姿勢のまま固まったように動かず。
囃子方も頭を下げたり下げなかったり、ばらばらでしたが・・・。
微笑ましかったです。


能と囃子を融合させたような、対立させたような趣向。
5回記念ということでか、見どころいっぱいの、とても面白い会だった。
演出やメッセージ性が強いというか、分かりやすい。
企画者の意図がストレートに伝わり、とても楽しませてもらった。
ほんと、お祭りでした。


それにしても私の感想、能に偏っている。
知識で書いているのか?とちょっと自問。