万作を観る会@国立能楽堂

久々の狂言会。
引っ越してきて初、かな?


番組は以下の通り

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武悪  武悪 石田幸雄
    主  野村萬斎
    太郎冠者 深田博治

融 笏ノ舞(舞囃子金春流
     本田光洋
    大鼓 佃良勝
    小鼓 観世新九郎
    太鼓 金春国和
    笛  中谷明

枕物狂 祖父 野村万作
    孫  野村小三郎
    孫  野口隆行
    乙  野村又三郎
              (地謡・後見省略、敬称略)

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『武悪』
実は能・狂言に興味を持ち始めて、初めて能楽堂で観た曲です。
その時も『万作を観る会』だったなあ・・・そういえば。
(ちなみに、主;野村万作、武悪;野村萬斎、太郎冠者;石田幸雄という配役でした)


あらすじは・・・
主が不奉公者の武悪を成敗するように太郎冠者に言いつける。
太郎冠者は武悪を追い詰めるが、討つことができずに、武悪に他国に行くよう言い含めて逃がす。
主が武悪を弔おうと東山にやってきたところへ武悪が来てしまい、太郎冠者は慌てて武悪を幽霊にしたててごまかすことに。
武悪は幽霊の格好をして、主人の持ち物を奪い、更に主を追い込む。
というお話


配られた小冊子によると、実は下克上の話なんだとか。
それを知って観ると・・・なにやら緊張感ある展開。
主の物々しさ、怖かったし。
武悪も、武士の潔さがあるし。
太郎冠者も、隙あらば武悪を討たんとするし。
首をはねるとか、表現がストレートで、残酷な話にも思える。
まあそこは狂言、武悪を見つけた主と太郎冠者の攻防なんかは、コミカルなのですが。
武悪の偽幽霊っぷりとか。


比べては失礼かもしれないが・・・万作さんの主のほうが、怖い→怖がりになる落差とか、キュートさが勝ってたと思う。
萬斎さんは、強い主だというのは充分だけど、幽霊を信じてなさそうな、シニカルさを感じてしまったので。(武悪はいたずらっ子さが似合っていたけど。)
石田さんの魚を追う姿とか、池から飛び上がるとか、情景が見えるようでした。
あの不敵な石田さんて、初めてかも。


『融』
舞囃子です。
狂言会で舞囃子や素囃子があるのって、好きです。
(これで囃子にはまったし@前述の万作の会)
シテの本田光洋さんは、以前『清経』を拝見した事があります。
堅実、誠実、というイメージでした。
小書きの『笏ノ舞』というのは、扇を笏に見立てて持つのだとか。
それだけで、優雅な貴族の雰囲気が出るのですね。


『枕物狂』
あらすじは・・・
年老いた祖父の元を訪ねた孫。
祖父が最近恋をしているという話を聞き、その相手を連れてくる。
そして二人はフェードアウト・・・という話。


書いてしまうとあっさりとこれだけの話なのですが、祖父の恋バナが長いのです。
蔓桶に腰掛けて、居語りをし、舞まで舞います。
万作さん、とても上品なお爺さんで、可愛らしくもあり、華やかでもあり。
囃子(アシライ)も入るし、全体に能っぽい雰囲気でした。
しかし!
その囃子のせいでα波が大量放出され・・・途中眠ってしまいました。
(ここんとこのたまった疲れもありますが。)
ああ、勿体ない、これを観に来たはずだったのに、未熟者です。
また観たい、と思います。
それにしても地謡の萬斎さん、ノリノリでした。
肩を揺らして、頭を振り回して・・・全身で謡っていました。
(ただ、そんなに身体を動かしていいのか、周りとのバランスを考えると疑問ですけど。一人で謡っているわけではないのだし。)


配られた小冊子には曲のあらすじ・解説、語句説明、詩詞の現代語訳などが載っていました。
デザインもとても素敵です。
(パールがかった白い紙に赤い枕のイラスト)
いつも思うけど・・・万作家の公演はこういうところが至れり尽くせりです。
能公演でもこれくらいやるといいんだけど。
というか、これくらいやってお客さんをとり込もうとか、なんとか解ってもらおう、という姿勢が少ない公演が多いように思う。
わかる人だけついて来い、という主張もいいけれど・・・それに見合ったクオリティであれば。
逆に言うと、能・狂言の公演は集客力が高いとも思う。
一期一会であればこそ、全国から客の集まる舞台もあるのだから。