友枝昭世の会(追加公演)@国立能楽堂

「安宅」です。

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シテ  友枝昭世
子方  友枝雄太郎
同山  長島茂, 狩野了一, 友枝雄人, 内田成信, 粟谷浩之, 佐々木多門, 谷大作
ワキ  宝生閑
アイ  三宅右近, 三宅右矩
大鼓  柿原崇志
小鼓  北村治
笛   一噌隆之
地謡は省略)

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まだちょとぼうっとしてます。
情報をすべてシャットアウトしたい気分。
いつもだったら、帰ってからすぐにテレビや音楽をかけてしまうのに、それが出来ない。
リセットされた感覚を濁らせたくない。
けど、忘れないうちに。


ストーリーは有名だし、単純明快。
源頼朝に追われ、安宅の関まで逃げてきた義経(子方)、弁慶(シテ)一行と、それを止める関守の富樫(ワキ)。
山伏に扮した一行に疑いを抱く富樫、勧進帳を読み上げ、さらに義経を打ち据えてまでもみせる弁慶。
関をとった後に富樫が一行のもとに来てからの酒宴と弁慶の男舞。
シテは直面、同山の迫力もあり、見ごたえ満点の曲です。


友枝昭世さんは初見。(仕舞はありますが)
あちこちで評判は聞いており、最もチケットの取りにくい役者の一人だと、言われているそうです。
実際・・・不思議な人でした。
これまで見たシテの印象とは、明らかに異なるものがありました。
言いようのない、例えようのない、雰囲気というか、ナニモノでもなさ、というか。
無理やりひねり出すと、澄明な、ジェルとか、フィルムとか。
黄色と緑色の同山に対して黒い衣だったせいもあるのかなあ。
観世流の安宅の装束の写真では、弁慶はかなりゴツいイメージだったので、そのシンプルさに意表を突かれた感じ。
とりたてて色気や、雄々しさや、力強さのようなものはなくて、つるっと意識に入り込んでくる。


ツボがいくつか。
その一
同山が富樫に詰め寄る時、ぞろぞろっと動いていくのが、妙におかしかった。
迫力ある場面のはずなのに、なぜかスライムに見えてしまって。(爆)
その二
男舞の直前、笛が長く吹いているときの、シテの姿。
ぱきっと意識が切り替わった気がした。(うわっ、かっこい〜と、唯一思った場面)
その三
直面て、『面』でした。
後見に汗を拭いてもらっているのを見て、驚いた。
生身の人じゃなく見えてたから。(現在モノなのに。)


いい意味で、拍子抜けしました。
何だかわからないけど、また観たい人です。
今度は対極の、鬘もので。


光がないと、物も色も見えないけれど、光そのものは、見ることが出来ない。
ある、のは確か。
でも正体不明。


妙な事書いちゃってるなあ。
これってば、能の感想になるのだろうか。
自問自答。