梅若研能会一月公演@観世能楽堂

梅のつぼみ

でもってやっぱり今更ですが、今年初『翁』です。


お正月の間は、舞台の上に注連縄がぐるりとかけられているのですが、ここのは、これまで見た中で一番もっさり、大盤振舞(笑)の密度の濃さでした。

『翁 法会之式』
翁	梅若 万三郎
三番叟	野村 萬斎
千歳	古室 知也
面箱	野村 遼太

能楊貴妃 彩色』
シテ(楊貴妃)	梅若 万三郎
ワキ(方子)	森 常好
間(蓬莱国ノ者)	高野 和憲
大鼓	亀井 広忠
小鼓	幸 清次郎(頭取)、幸 正昭、森澤 勇司
笛	一噌 幸弘

狂言『鍋八撥』
シテ(鍋売り)	野村 万作
アド(鞨鼓売り)	月崎 晴夫
アド(目代)	深田 博治(代演)

仕舞	
笠之段	梅若 紀長
網之段	梅若 靖記

能『恋重荷』
シテ(山科荘司/荘司ノ亡霊)	梅若 万佐晴
ツレ(女御)	梅若 泰志
ワキ(臣下)	村瀬 純
間(下人)	石田 幸雄
大鼓	亀井 実
小鼓	幸 正昭
太鼓	大江 照夫
笛	成田 寛人

附祝言

(後見・地謡は省略しました)


『翁 法会之式』
この小書は、追善・法会の際に付くものだそうです。(「2世梅若万三郎17回忌追善」とありました)
詞章がどう違うのかは、分かりませんでしたが、三番叟『鈴之段』では、鈴ではなく、錫杖を持ちました。
シャリシャリと、涼やかな音色で、鈴とはまた違った雰囲気。
錫杖を振るのは、あちこちの邪気を払っているようで、陰陽師っぽい。(笑)


万三郎、気品がありますね。
小花模様のワンピースが似合いそう・・・て、そういう趣味ではなく。(←当たり前)
大胆さとか派手さはないのですが、ポチっと、そこだけいい匂いのしそうな佇まい。
神官の儀式のような、清楚な翁でした。
千歳は、力みすぎ・・・?
三番叟は、さすがの萬斎さま。今日も高く跳んでいました。
囃子方も、幸ちゃん&広ちゃん(笑)の、「現在形」メンバーですし。慣れたものです。
小鼓の、ペシッと、皮を押さえるように打つ手って、あまり見たことないなぁ。


翁の時って、皆、烏帽子に素襖の正装なのが、キャ〜カッコイイ〜♪というミーハーポイントでもあるのですが、今日はちょっとびっくり。
シテ方の、特に翁後見の素襖に染め抜かれた、紋の大きさ!!
ババーンと背中一面に紋が・・・大工とかとび職の半被みたい?(笑)
あと、両胸と、両袖、両足にも、バーン、ドーン、ジャーン、と。
初めて見る大胆なデザイン(?)でした。


残念だったのは、上演中に客が入ってきたこと!
今までにも、翁が退出し、三番叟の舞の時に客が入ってきた時もありましたが、今日は、役者全員が所定の位置についた頃から。
その後も、パラパラと・・・。(ある程度まとめているようでしたが。)
ありえない・・・翁なのに・・・。
遅れて入ってくる客も客だが、係員もどうかしてる。
確かに、注意書きはなかったけど、『翁』の常識ではないでしょうか?


楊貴妃
ワキの次第の、メロディー(節回し)が、面白い。(←こういうことを思えるようになったのも、謡のお稽古を始めてからです。役に立ってるなぁ♪)
でもって、とても説明的。よくしゃべる。いつものことだけど。(笑)
この世ならぬ、何かフワフワした物が降っている世界でのお話のようでした。
最後は置いてけぼり〜になっちゃう、楊貴妃
あまり哀しそうには見えなかったけど・・・。
むしろ、ワキの方が名残惜しそうな?(楊貴妃の魅力にクラクラきちゃった?)(←そんなワケない)


美しくて、はかなくて、良かったのですが・・・集中力は途切れがち。
う〜ん、長かった。


『鍋八撥』
私、配役を勘違いしてまして、万作が側転するのか!?とワクワクしておりました。
実際は、鞨鼓売りの月崎が見事にくるくる回たのですが。
目代役、番組では野村万之介だったのですが、出てきたのは深田博治。体調不良かな?心配です。(ある年齢以上の方の休演は、不吉な想像をしてしまいがち)


万作さんの、すっとぼけ具合は、ちょっと小憎らしい。
知恵の回る悪ガキみたいで。(苦笑)
最後、鍋を割ってしまったのも、自業自得だ〜と、思える程度に。
「数が多うなって、めでたい」って終わるので・・・おめでたい演目なのか・・・な?
笛の音が、鍋売りの心象風景でもあるように、弱々しくなったり、勢いづいたりと、ユニーク。
月崎の肩衣を後見が、上に引き上げてスポッと脱がせたのが、ツボりました。


仕舞
すみません、舞台への出方や扇の扱い方など、作法ばかり見てました。(苦笑)
お二人とも、身体が軽い感じがしました・・・若いから?


『恋重荷』
と〜っても説明的な台詞が冒頭でワキによって語られ、途中のアイによっても「独り言なんだけど」と言いながら語られ(笑)、分かりやすいお話でした。
展開は唐突ですが。(能は概ね唐突ですけども)


シテが、中入りで幕に走り去っていくのが、 「え〜ん、覚えてろよ〜〜」と、いじめられっ子みたいに見えてしまった。
最後のオチは・・・・・釈然としないまま。(あらすじ読んだときから思ってましたが、解決されませんでした。)
出来ない無理を言われて泣いて帰り、パワーアップして復讐するって・・・ドラえもんの世界かも?
結構露骨に色々言っているのが、おかしかった。(ええ〜っ、そんな表現あり!?)




例えるならば。
シンプルなお雑煮を食べたあとに、中華粥を出され、ぜんざい食べて休憩したあと、カレーを食べた感じ?
(おせちに飽きたらカレーもね・・・て、おせち食べてないじゃん!)
お正月メニューとしては妙ですが、面白い取り合わせでした。


ということで、翁も見たし、いよいよ今年も始まりました!(←今更かよっ)