古希記念幸清会@国立能楽堂

大方の予想通り(←誰?)行ってまいりました。
老女ばかり4曲という驚きの会です。

観世流 卒塔婆小町 一度之次第
シテ	梅若 紀長
ワキ	森 常好
ワキツレ	舘田 善博
大鼓	安福 建雄
小鼓	森澤 勇司
笛	藤田 大五郎
地頭	観世 銕之丞

		
舞囃子高砂 八段之舞
	観世 銕之丞
大鼓	亀井 実
小鼓	船戸 昭弘
太鼓	観世 元伯
笛	寺井 久八郎

		
金剛流 鸚鵡小町
シテ	金剛 永謹
ワキ	宝生 欣哉
大鼓	柿原 崇志
小鼓	後藤 嘉津幸
笛	一噌 隆之
地頭	豊島 三千春

		
素囃子 延年之舞
大鼓	大倉 正之助
小鼓	柳原 冨司忠
笛	一噌 幸弘

		
観世流 姨捨
シテ	観世 清和
ワキ	宝生 閑
ワキツレ	大日方 寛、則久 英志
間	野村 萬
大鼓	亀井 忠雄
小鼓	幸 正昭
太鼓	金春 惣右衛門
笛	一噌 仙幸
地謡	梅若 六郎


独調 駒之段
	宝生 和英
小鼓	後藤 孝一郎
		
一調 難波
     粟谷 明生
小鼓	蘄井 四郎兵衛
		
一調 笠之段
	櫻間 金記
小鼓	蘄井 良治
		
一調 歌占
	観世 喜之
小鼓	野中 正和

		
観世流 桧垣 蘭拍子
シテ	梅若 万三郎
ワキ	森 常好
間	山本 東次郎
大鼓	亀井 広忠
小鼓	幸 清次郎
笛	松田 弘之
地頭	野村 四郎

附祝言		

地謡・後見は省略しました


入り口の案内に、10時開始、終了19時30分との掲示・・・・・そのうち休憩は10分×2回のみ。
拷問芸能という単語が頭をよぎりました。(笑)


食事抜き、脱水症状&膀胱炎覚悟です。(笑)


(以下、かなりの長文です。)


卒塔婆小町 一度之次第
初見でしたが、あらすじ省略。小野小町は老後も生意気だった、というお話です。(←適当)
シテは梅若紀長。老女といっても、やや若い印象。シワがなくてつるりとした、白い面。世界を斜に見ている雰囲気の小町。シテの次第から始まったのですが、我が身の老いを嘆きながらも、卒塔婆に腰掛けたことを咎める僧に、「枯れたとはいえ、私も花よ」と言っちゃうあたり、いい女優っぷり(笑)。夏木マリとか桃井かおりとかがタバコくわえながら蓮っ葉な調子で演じるのを想像してしまった。
地謡も囃子もよかった〜。幸清流って、掛け声が華やかですね。色気がありました。


舞囃子 高砂 八段之舞
銕之丞の足拍子、重くて、強くて、ガツンと気持ち良い。(←でも床が心配)
老女物の余韻を吹っ飛ばす勢いで(良い意味で)、すっきり。
大鼓方の手が真っ赤になってました。


鸚鵡小町
こちらもまた、小野小町は老後も生意気だった、というお話。(何故そんなに小町はいじめられるのだろう?)(←いじめてないって)
シテの出立が先の『卒塔婆小町』と同じ。同じようなネタだしなぁ。いや、こういう場合、重ならないように変えるものだと聞いたことがあるのですが、いいのかな?流儀違うから??けど、同じような装束や面が続くと、楽しみが減った気になりますね。それはそれで、シテの個性に注目できるけれども。
閑話休題
夏に見たからと気を抜いたのか・・・・・睡眠時間になってしまいました。(汗)
シテの金剛永謹は、ちゃんとお婆さんでした。眉間にシワを寄せて、気難しそうな雰囲気。定年退職した国語の先生を訪ねたら、年賀状の誤字を指摘された気分(笑)。置いてかれた〜、とワキを見送る姿と、幕に入るまで杖の音のみ残るのは、じわ〜っと余韻が残って、良かったです。
(好みとしては夏のテツノジョーの方が良かった。お婆さんには見えなかったけど。)
これまた囃子が素敵。この小鼓方の声、好きだなぁ。


素囃子 延年之舞
コブラvsマングース
いや、笛vs大鼓でムキになっているようで、笑ってしまいました。(←先入観)
私の好みからは外れるのですが・・・・迫力もあり、面白くもあり、なので、能楽囃子でなく、パフォーマンスとかセッションとか言われたら、ありですね。


姨捨
初見です。
自分が、虫とか、夜露とかになった気分。とてもとても小さな卑しい存在として、この深く悲しい風景を見ている。(共感を全く出来ない、手も足も出ない、遠い世界。否定的な意味ではなく。)
シテは観世清和。ノーブルで、本当に美しい。老い独特の臭いを感じさせず、少女のようでもある。後シテの、月に照らされたようなクリーム色がかった長絹&大口袴。舞台中央に座る姿は、そのまま露のように消えてしまいそうに儚い。(なぜか「天上のアイスクリーム」by宮沢賢治『永訣の朝』というフレーズを連想)
そして置いていかれてしまう・・・・のね。
笛と大鼓、絶品でした。
アイの語りは、この曲独特のネタバレがあるのですが、集中力が途切れてしまいがちだったのが、惜しいことをしました。(←私の問題)
うつくしい〜、長い〜〜、序の舞〜〜〜、と、ぼぅっとしがちだったのは、つくづく勿体ない。(涙)


独調・一調は省略します。
これで5流すべて揃っています。
扇の持ち方とか、座り方とか、見比べるのも面白い。


桧垣 蘭拍
素晴らしかったです!!
シテの梅若万三郎は、可憐な小花のよう。清楚で可愛い、演技派アイドル!(笑)
小書付ということで、後シテの序之舞の前に、乱拍子がありました。これまた、すごい。道成寺みたいな怨念の舞ではなく、白拍子として、かつて一世を風靡した姿の再現。その晴れがましさが伝わってくる。それでいて、そんな浮かれた自分を恥じてもいる。序之舞もただただ美しくて。
手桶を置いて、心から救われたいと、僧に願う。それを受け止めるワキ。森常好は、シテの視線の受け止め方が真摯だなぁと思う。ククッと、繋がるのが分かる。
それにしても、ワキ方って少ないんですね。森常好は『卒塔婆小町』と『桧垣』のダブルヘッダー。肉体的にも精神的にもきつそう。
アイは山本東次郎。いい〜!こういう曲には、絶対です。
地謡も良かった〜。過剰でなく、豊かで。
笛は、繊細で、怖いくらい。大鼓は、溜めて溜めて、突き破る。演者も、見所も、甘やかさない。そんなギリギリの二人の間で、小鼓の捻り具合が、調和を保っていた。



よくもこんな思い切った会ができたものですね。
番組もすごいし、出演者も贅沢三昧。
囃子方だから、できるのかも?


9時間30分・・・・・・・・・・・・・時々意識が途切れましたが、制覇しました。
贅沢な時間でした。


長文で駄文、失礼しました。