せぬひま第三回公演@大江能楽堂

いゃあ、酔っぱらいましたー。
うれしいサプライズあり。

舞囃子 融 舞返
浦田保親
大鼓  河村 大
小鼓  吉阪一郎
太鼓  前川光範
笛   森田保美
地謡  味方 團
    河村和重
    味方 玄


一管
獅子  一噌幸弘


獅子  森田保美


獅子  藤田六郎兵衛


連管(おまけ) 獅子
笛   一噌幸弘
    森田保美
    藤田六郎兵衛
太鼓  前川光範


狂言
文蔵
茂山千五郎


舞囃子 夕顔
山九郎右衛門
大鼓  河村 大
小鼓  吉阪一郎
笛   藤田六郎兵衛
地謡  浦田保親
    河村和重
    味方 玄


猩々乱
味方 團
味方 玄
大鼓  河村 大
小鼓  吉阪一郎
太鼓  前川光範
笛   一噌幸弘
地謡  浦田保親
    河村和重


京都で活躍されている森田保美、河村大、吉阪一郎氏が主催する「せぬひま」第3回目の公演です。
お調べが聞こえてきて、ぎゅぎゅっと見所が締まっていく雰囲気が心地良い。
なかなか、そういう公演て無いんですよね、残念ながら。だから一層、能の好きな人が集まってるんだ、と嬉しくなりました。


融 舞返
平安時代の貴族、源融の霊が月夜に舞う場面です。ちなみに<舞返>の小書きは、通常の舞が終わるところで、また改めて舞い始めるものだとのこと(チラシより)。
風雅な雰囲気なのですが、浦田保親氏の舞には力強さを感じました。月がのぼっていくにつれて、段々と狂っていき、視界が真っ白にフェードアウトしてしまう、かと思った瞬間に我に返って。淡々と、大小とも打ち続けるところがあるのですが、そのリズムが、ぶわーっと覆いかぶさってきて、見ているこちらが叫びだしたくなる。
そんな感じでした。


獅子
笛対決の1番手は一噌幸弘さん。一噌流笛方で、東京で活躍されている方です。
笛は打楽器ですか!?というくらいの、指使い。何であんなに動くんだろう(笑)。ギリギリまで崩して、音になるかならないかの、前衛芸術のよう。バロック的?キュビズム的?『獅子』が、全然聞いた事のないものの様に思えてきました。すごかったです。噂には聞いていましたが、息継ぎなしで吹き続ける奏法、初めて見ました。すごいテクニックを持った人です。
あんなに全身でうねるように吹いていたのに、ピョコッとお辞儀をして飄々と退場しました(笑)。
ところで他の2人よりも長かったのは、なんでしょう?(前場なのかな?もしやアレンジ??)


2番手は、森田保美さん。森田流で、「せぬひま」メンバーです。
先の獅子と比べると、とても優しく聞こえます。メロディーがちゃんと辿れる(笑)。派手さはないけれど、森田さんだなぁ、て絶対分かる音。聞き馴染みもあるし、「せぬひま」ラブな私の贔屓目なのかもしれないけれど一番好きだなぁ、と思いました。


ラスト、藤田六郎兵衛さん。藤田流で、名古屋にいた時よく拝見していました。
ヒシギの高い音が、耳に痛くない!というのに驚き。音が刺さってくるというよりも、頭のてっぺんから抜けていくような、爽快感というか。構えている姿が、笛をというより、バイオリンのようにも見え藤田氏が歌っているようにも見え。光沢のある絹地みたいに、艶やかで、滑らかで、美しい音でした。


ほうっ、とため息をついていると、藤田氏が、特別に笛方3人による合奏を聞いてもらいます、と話し始めました。良い機会だから、違いを知ってもらうために一緒に吹いてみようと、直前に楽屋で打ち合わせをしたらしいです。だからリハ無し(笑)。能の公演でこういうハプニングって、初めてです。もうそれだけで、嬉しいというか、笑っちゃうというか。


ということで、藤田さん、一噌さん、森田さん、そして太鼓の前川光範さんが並び、何とも奇妙な図。心なしか、前川さんもニヤニヤしているし。「“三大テノール”ではないですが」て、それよりもありえない光景です。
いやぁ、貴重な体験でした。どう言ったらいいのか・・・見事にハモってなくて(笑)。凄まじいまでの不協和音。各々違うのは分かりました。ということは、隣から変な笛の音が聞こえて、かなりやりにくいんでしょうねぇ。ムキになってる姿が面白かったです。


文蔵
いつもの、面白く笑わせてくれる雰囲気ではなく、裃に長袴の正装で、きりりとした千五郎氏登場。カッコイイ!葛桶に腰掛け、平家物語の一説を語ります。最初淡々と話すのが、段々と馬に乗る様子や敵を捉えて首を切る動きを交えたオーバーアクションになっていきます。腰掛けたままでよくもあんなに色々動けるものだ、と思います。狂言の語りって、ドラマチックで、引き込まれますね。いつもは「文蔵」という単語が出たら太郎冠者が話を遮るので、語られている物語自体は完結しないのですが、今日は最後まで話してくれ、ああ、そういうラストだったのねぇ、と納得。


夕顔
源氏物語の夕顔の霊の序の舞。片山九郎右衛門師の舞、好きなんです。しっかり安定しているのに、ふんわりした浮遊感もあって。完全な球体が、摩擦ゼロの床の上を、慣性の法則で永遠に転がり続けるようなイメージ。片山師自身よりも、その目線の先にある“何か”を見ているような感じ。なめらかなミルクチョコレートを思う存分食べて、その甘さと舌触りの良さに酔ったような。霧の中を歩いているような。静かな、白い世界。


猩々乱
酒好きの妖精(?)猩々の、酔っ払いの舞。酒を酌み、飲み干しては「もう飲めましぇ〜ん」というようにいやいやをして、けどまた酒を酌んで・・・そして最後には酔いつぶれ、何だか可愛い。味方玄・團氏はご兄弟とあって、声がハモってるし、動きもそっくり。親近感を感じる内容のせいか、一番リラックスして見れ、こちらまで気持ち良〜く酔っ払ってきました。




かなり私のトリップ感を暴露するような感想になってしまいましたが、雰囲気を味わっていただけたら幸いです。
第1回目は打上花火、2回目は線香花火、今回はう〜〜ん、七色に変化する仕掛け花火、というところかな?


チラシで第4回公演について書かれていました。


平成19年4月13日(金)
何と、 
「せぬひま vs. 神遊」だそうです!!
うきゃ〜〜〜。(卒倒)


あ、『神遊』というのは東京の若手能楽師グループです。
詳しくは→http://www.kamiasobi.com/


今から来年の予定をやりくりすべし、ですよ、皆様。