友枝会@国立能楽堂

満席でした。
狂言会とか、記念公演、企画モノではないのに、さすがです。
そして見所もとても上品。(=年齢層高め?)

      • -

『浮舟』
シテ 友枝昭世
ワキ 宝生閑
アイ 野村扇丞
大鼓 柿原崇志
小鼓 北村治
笛  一噌仙幸

『舟渡聟』
シテ 野村萬
アド 野村万蔵
アド 小笠原匡

『石橋』
シテ 友枝昭世
ツレ 友枝雄人
ワキ 宝生欣哉
大鼓 國川純
小鼓 観世新九郎
太鼓 金春惣右衛門
笛  一噌隆之

      • -


『浮舟』
源氏物語にある、あの浮舟です。
貴人二人にモテモテでどちらをも選びきれず、尼になった女の話です。


前シテの里女は鮮やかな黄色の水衣で現れ、あどけないというか、ちょっと回路がおかしくなってしまった人のイメージ。
いつも、居グセは、動かないし、謡いはわからないし〜で、撃沈タイムなのですが、今日は違いました!(相変わらず聞き取れませんが)
ワキを見て語り、正面を見て語り、その姿がとても美しい。
コミック風に、回想シーンと現在とが行き来している感じです。


そして後シテ、出てきた瞬間、鳥肌が立ちました。
緋色の長袴に、唐織を前をはだけて着付け、いかにも心がどこかへ飛んでしまったよう。
狂ったように(狂ってるのですが)舞う姿は、切なくて、美しい。
もう悩みはなくて、ただピュアな哀しみを感じました。


シテが舞台を去った後にもその空気は残っていて、しっとりと、寂しさが見所に広がっていくようでした。
友枝昭世さんは、余韻をとても大切に残してくれる人だと思った。


囃子方も良かった〜!
大鼓と小鼓の掛声のハーモニー(?)がバッチリです。


『舟渡聟』
初めて嫁の家に挨拶に行く聟が、乗り合わせた船の船頭(実は嫁の父)に、手土産の酒を飲まれてしまう。
船頭は髭を剃って対面したが、ばれてしまい、バツの悪い思いをするが、最後は二人で相舞を舞って和解する。


野村萬さんは、とても上品です。
品がよすぎて、笑いにくい。(^ ^;)
上手いな〜という、感想です。


何度か見たことのある演目で、各家で雰囲気がかなり違うと実感。
大蔵流和泉流ではオチも違うし。(大蔵流は、船頭と父は別人で、空の土産を持ってきた聟は恥ずかしくて逃げてしまう。)
ちなみに、一番面白かったのは、茂山家のでした。


ところで、なぜこの曲なんだろう?と考えたのですが、“舟”つながり?


『石橋』
んもう、かっこいい!!


不思議な事に、華やかさは感じないのですが、とにかく強くて、かっこいい!!
和風な、サムライ風な、凛々しさのある、獅子でした。
(そうえいば『安宅』でもそうでした。派手さが無い、けどやたらかっこいい。←こればっか)


拍手の無い『石橋』て、初めてでした。
(大抵、シテが幕入りするかどうかで拍手が起こるのですが。)
まだそこに獅子がいるかのような空気が残っていて、拍手で壊したくないとは思いましたが・・・本当にお上品な見所でした。
(しかし、この方々が発売日に電話攻撃している姿は想像つかない。)


ここんとこ続けて獅子を見ているような気が。(気のせいじゃない!)
どれもとても個性的で、楽しかった。
しかし、やはり、能楽堂で見るのが一番安心できます。
基本的に、ホールでの演能は苦手なのですが(見辛いし音が悪いし)、新作能(大抵ホール)には惹かれてしまったりするのです。
今しか見られない、と考えてしまって。(スタンダード曲になり得るクオリティではないということだったり。)


再三繰り返すようですが。
友枝昭世さんのピュアな空気感は独特で、感染性があります。
そりゃ〜人気あるだろう、と納得しました。